民泊が普及しても、気前の良い観光客は増えない

 神奈川県に続き、大阪府も民泊を許可する条例を整備しました。一部メディアは「民泊は世界の流れ」と紹介していますが、弊害などに全く焦点を当てていないことは気がかりです。

 それは以下のような問題が今後起きる可能性が考えられるからです。

 

 日本国内では『他人から料金を得て、宿泊施設を提供すること』は旅館業法で規定されています。

 この根拠となっているのは、不特定多数の人が出入りする施設での衛生管理を徹底するためです。平時であれば特に問題視する必要はないことだと言えるでしょう。しかし、食中毒や伝染病といった感染力の強い症例が発生した有事の際に責任の所在をはっきりさせる目的もあります。

 現状の民泊ルールでは、この点が考慮されているとは言い難い状況です。既存のホテルや旅館には現行ルールが適用され、民泊施設では衛生管理義務を負わないのは不公平なものと言わざるを得ません。

 実際に民泊が広まると次のようなことが生じます。

 

■ 建物の不動産価格が下落

 不特定多数の人が出入りする訳ですから、オートロックのようなセキュリティ機能は “あるけど、効果のないもの” に成り下がります。

 ゴミ出しなど日常生活でのルール面を短期滞在者が守るかどうかも疑問です。

 また、旅行先で夜通しパーティーをしたいと考える人々もいるでしょう。その人々が出す騒音が容認できるレベルを超えていれば、住民は離れることになり、買い手も敬遠することで資産がマイナスになることが濃厚です。

 

■ ダウンタウンのスラム化

 ダウンタウンも民泊が広まることで、治安が悪くなり、スラム化が進行します。

 地元民目線で見えれば、外国人が増えることを気味悪く感じるでしょう。ただ、日本で生活するワルも来日した外国人を物色しようと引き寄せられることを見落としてはなりません。

 その結果として、犯罪を誘発しやすい土壌を生み出すことにつながるのです。

 

 意外に感じられるかも知れませんが、ダウンタウンと呼ばれるエリアが高級住宅地区になっている国は少数派です。多くは(自動車が不可欠な)郊外に位置しており、中心部はビジネス街を除いて、近寄らないことを推奨されるほどです。

 来日する観光客は日本の『安心・安全な都市』と交換するだけの価値のある人々なのでしょうか。

 民泊を求める顧客は価値よりも価格を重用視する人々ということもできます。「安物買いの銭失い」とならないよう、正当な対価を支払うことのできない(もしくは払う気のない)訪問客はお断りすることも必要になると思われます。