「フクシマが放射能で苦しみ続けて欲しい」と願うメディアが“1ミリシーベルト”を主張する

 2月7日に丸川環境大臣が「除染の基準となっている年間 1mSv は何の科学的根拠もない」と発言したことにメディアが噛み付いています。

 この件についての科学的根拠はあるにはあるのですが、適応方法が間違っていることをはっきり明言しなければ、福島復興の “足かせ” になることは目に見えています。

 

 『放射線被ばく基準』については中川恵一氏が紹介しているリスク管理を参考にするべきでしょう。

 まず、リスク管理についてですが、ICRP (国際放射線防護委員会)は「放射線被ばくは少ない方がよい」という当たり前の立場を採用しています。単純に問題が生じる確率を下げるため、リスクは少なければ少ないほど良いと考えるからです。

 この考えが福島での原発事故後、LNT仮説と結びつき「被曝すればするほどリスクが高まる」という言説が流布する原因となりました。

 ちなみに、LNT仮説(Linear Non-Threshold :しきい値のなしの直線仮説)とは『放射線被曝線量とその影響には直線的な関係が成り立つ」という考えです。朝日新聞などのメディアはこれを基に「1mSv までの除染」を声高に叫び、除染作業がスタートしました。

 

 しかし、この政治的な判断には大きな間違いがありました。

 中川氏の記事にも掲載されているのですが、LNT仮説がリスク評価しているのは 100mSv を超えた場合であり、それ(100mSv)以下では疫学的な根拠は一切認められないのです。

 あまり馴染みのない単位が出ているのでイメージがつかみ取りにくいでしょう。次のように考えてみるとイメージしやすいと思われます。

 

 「時速4キロの車と衝突して死ぬ確率は、時速80キロの車と衝突して死ぬ場合の20分の1である」

 LNT仮説が正しいのであれば、上記命題が成り立たなければなりません。実際にはありえないことは経験則で分かるでしょう。

 人の歩く速度が時速4キロ前後ですから、前方不注意でうっかり壁(や駐車中の車)に激突した人がそこそこ亡くなっていなければならないのです。そういったニュースは見聞きしませんし、現実では自分の恥ずかしさを隠すために一刻も早くその場を離れたい人がほとんどでしょう。

 

 ICRP では上記を踏まえ、次のような勧告を出しています。

  • 平時(通常時)
    • 一般(公衆):年間 1mSv
    • 職業人:年間 50mSv かつ5年 100mSv 以下
  • 有事(緊急時)
    1. 年間 20 〜 100mSv
    2. ある程度収束すれば年間 1 〜 20mSv で目安を設置
    3. 最終的に平時(年間 1mSv)に戻す

 この指標を見た際に注意しなければならないことは、ここに記載されている数値は防護上の目安(=リスク管理)だと言うことです。科学的データに基づくリスク評価ではありません。

 

 これらに沿った対応を決定した民主党政権の何が問題だったのかと言いますと、(有事の際の『1』と『2』を飛ばし、)いきなり有事の『3』を求めたことです。

 「フクシマが放射能で汚染され、地元住民が苦しんでいる」とセンセーショナルな見出しを打ちたいメディアもそれに追従し、金儲けに走りました。未だに福島県の住民に “被害者” としての役割を演じて欲しいと願うメディアや活動家も存在する始末です。

 これでは、どれだけ福島県民が前を向き、困難を乗り越えようとしても報われません。

 おそらく、丸川大臣の発言は「フクシマは放射能で苦しみ続けて欲しい」と願うメディアほど厳しくバッシングするでしょう。恥を知らなければならないのは、他人の不幸で金儲けを企むメディアであり、ずさんな対応方針を決めた民主党政権なのです。

 

 少なくとも、当時対応を決めた細野豪志議員は自らの過ちを認めなければなりません。ツイッター上で「除染の長期的目標として、“平時の基準” を適用するのは当然」と述べていますが、『放射線被ばくの早見図』(PDF)に目を通しておくべきでしょう。

画像:放射線被ばくの早見図

 放射線医学総合研究所によりますと、日本での1人当たりの自然放射線量は年間 2.1 mSv です。細野議員やメディアの叫ぶ年間 1mSv がどれだけ滑稽で、ナンセンスなものかを物語っていると言えるのではないでしょうか。