英・インディペンデント紙廃刊、紙媒体は先進国で風前の灯

 朝日新聞を始めとする各メディアがイギリスの日刊紙『インディペンデント』が今年3月で紙媒体を廃刊することになったと報じています。

 廃刊の理由は「販売部数の低迷」の低迷ですが、これはイギリスだけに限ったことではありません。日本の新聞社でも同様のことが起きる可能性は十分にあると言えるでしょう。

 

 英国の日刊紙「インディペンデント」が廃刊されることになった。12日、オーナー傘下のESIメディアが発表した。部数が低迷し、日曜版とともに3月下旬に約30年の歴史に幕を閉じる。デジタル版の発行は続けられる。

 発表によると、インディペンデント紙の最終発行は3月26日、日曜版が同月20日となる予定。

 実際にインディペンデント紙がどのぐらいの発行部数を記録していたかと言いますと、ウェブサイト『プレスガゼッテ』に掲載されていた2015年6月時点での月間平均販売部数が参考になるでしょう。

表1:イギリスの新聞発行部数(2015年6月)
新聞社名 発行部数 前年比
デイリー・テレグラフ
[保守系]
489,739 -4.83%
タイムズ
[中道右派]
389,409 -1.05%
ガーディアン
[リベラル]
171,218 -7.61%
インディペンデント
[リベラル]
57,930 -8.78%

 インディペンデント紙は6万部弱。前年から 8% も販売部数を減らし続け、改善兆候が見られないのであれば、いつ撤退に踏み切るかが焦点になります。

 リベラル的な論調の紙面であるガーディアン紙もインディペンデント紙と同様、衰退兆候が著しく、紙面版が廃刊になるのは時間の問題だと言えるでしょう。

 

 英語圏のメディア(特に紙媒体の新聞)の凋落が激しい理由は英語とインターネットの2つの要素があります。

 英語にせよ、インターネット(IT)にせよ、どちらもビジネスの世界では共通のツールとして認識されています。また、早い時期からビジネスシーンで採用されていたこともあり、勉強方法や習得のノウハウが他の言語やテクノロジーよりも豊富に存在します。

 つまり、ちょっとした物知り程度の新聞記者が書いた記事よりも、専門家や当事者が全世界に向けて情報を直接配信できる環境が整ってしまったことを意味するのです。

 この兆候は先進国でより色濃く現れており、伝達速度に劣る新聞には分の悪い勝負と言えるでしょう。その上、誤報や捏造が疑われる報道内容についても、ネットの普及で困難となりました。既存メディアが君臨して来た時代はもう終わりを迎えているのです。

 

 リベラルを自称する人々は「自分たちは知的である」と考えてきたのでしょう。彼らは「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」というダーウィンの言葉を噛み締めなければなりません。

 “インターネットの普及” という環境の変化が起きたのですから、それに適応し、ビジネスモデルを変化させれなければ生き残れないのは当然です。

 変化することを拒むのであれば、平家物語の冒頭にある『おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ』を体現してくれることを期待したいと思います。