消え行く香港の『一国二制度』 中国に屈することの恐ろしさ

 2016年初頭に香港の書店関係者が相次いで謎の失踪を遂げていたことがメディアで報じられました。

 そのことが明るみに出てから、「中国当局によって拘束されたのではないか」と噂されていましたが、それが現実であることが判明しました。香港で何が起きているのでしょうか。

 

 香港はイギリス統治時代があった関係で『一国二制度』が根付いた都市です。

 自由主義経済が根付き、民主/言論の自由がありました。また、司法も(中国・北京から)独立しており、それらが香港の繁栄を大きく下支えしていたと言えるでしょう。

 ところが、香港が中国に返還されてから様相が様変わりしました。経済は中国当局の意向が強く反映され始め、香港のトップを決める長官選挙は中国からお墨付きを得た人物しか立候補が認められませんでした。

 民主主義が損なわれることを懸念した学生たちによる大規模なデモ活動が起きたことを記憶している人もいるでしょう。それだけ、香港は様変わりしているのです。

 

 中国政府の横暴が繰り広げられる中、言論の自由が損なわれる事態が発生しました。それが香港にある銅鑼湾(どらわん)書店の関係者が相次いで失踪した事件です。

 昨年(2015年)10月頃から筆頭株主、創業者、株主、経理、店主と5名が行方不明になりました。

 この銅鑼湾書店は中国共産党が “禁書” に位置づけている書籍など中国が不愉快になるであろう本が多数販売していました。党内の権力闘争から(下半身など)スキャンダル暴露本、天安門事件に関連する書籍など多岐にわたっていたとのことです。

 それだけに中国共産党から重点的にマークされていたと言えるでしょう。

 

 この状況下で中国・習近平政権は堂々と “知識人狩り” を行いました。香港・銅鑼湾書店の関係者には中国人だけでなく、外国籍(スウェーデンやイギリス)保持者がいたにも関わらずです。

 しかも、中国当局が拘束したのは中国国内ではなく、彼らの主権が及ばない(はずの)香港やタイだったのですから危機感を抱かない方が不思議です。

 中国政府に批判的な言動は制限され、中国国外で拘束されるのですから、『表現の自由』も『司法の独立』もありません。この現実に対し、日頃から「表現の自由を守れ」と勇ましい声を上げているリベラル派は何をしているのでしょうか。

 チャイナマネーのおこぼれに群がり、中華思想を妄信するようになっているとすれば致命的です。また、中国政府に睨まれることを恐れ、保身に走るのはジャーナリストとして恥ずかしすぎます。

 

 中国に依存するほど、中国政府の意向を受け入れなければならないという副作用が生じます。安易に中国に接近すると、どういったことが生じるのかを香港の例から学ばなければならないと言えるのではないでしょうか。