鹿児島県、奨学金の肩代わりを申し出る ただし、防衛医大方式で

 読売新聞が伝えた記事によりますと、鹿児島県が日本学生支援機構の奨学金を借りている学生に対して、返済を肩代わりする制度を設けるとのことです。

 もちろんですが、条件があります。その条件は防衛医大で採用されている内容と似通っていると言うことができるでしょう。

 

  鹿児島県は、日本学生支援機構の奨学金を無利子で借りている県出身者が大学卒業後に県の基幹産業で最低3年間就職することを条件に、奨学金の返済を全額肩代わりする制度を設ける。

 実態に合わせて条件が見直される可能性はあると思われますが、現時点で想定されている条件をリスト化すると次のようになります。

  • 鹿児島県出身者であること
  • 大学卒業後、鹿児島県が指定する県の基幹産業に勤務すること
  • 最低3年間は離職しないこと
  • 日本学生支援機構の無利子奨学金を借りていること

 地方自治体が主導するプロジェクトとしては高い評価を得られる内容と言えるでしょう。鹿児島県の基幹産業を営む企業からすれば、優秀な学生を確保できる可能性が従来より高くなることが期待できるからです。

 

 この制度のキモになる部分は対象が “無利子奨学金を借りられる” 成績優秀な学生に限定されていることでしょう。

 『名門』と言われる首都圏に位置する大学の学生であれば、全員が無利子奨学金を借りられるという訳ではありません。「大学での成績が優秀であるか」が審査されるため、(どれだけ偏差値の高い大学に入学したとしても)学業以外に精を出していれば借りることが困難になります。

 つまり、学生の本分である学業で成果を残して来たかを見るバロメーターとしても機能しているのです。

 これに対し、「学力だけで決めつけるのは良くない」と主張する人もいるでしょう。しかし、企業は慈善事業を営んでいる訳ではないのです。競争が激しい市場で生き残るために、優秀な人材を確保したいと考えるのは当然です。

 

 では、なぜ “学歴フィルター” と呼ばれるものが存在するのか。それは学歴の高い人は『テキストを理解し、答えを導くことに長けていると見込まれる』からです。

 もちろん、ビジネスは学業とは違います。

 ですが、企業で組織の一員として働く場合、その企業独自の『内規』に沿って仕事を進めることが求められます。学力(=学歴)が高い人は『内規』を理解することに時間をそれほど要さないでしょうから、企業に利益をもたらすために必要なコストが低いと期待されています。

 逆に何度教えても覚えが悪い人物に給料を支払ってまで雇おうとする企業があるでしょうか。あるとすれば、同族企業でオーナー一族のコネで採用している場合に限定されることでしょう。

 

 ただ、鹿児島県の制度でも期待した人物を確保できるかどうかには不透明な部分があります。それは優秀な学生が(鹿児島県外の)他企業に取られる可能性があることです。

 就職活動での面接時に「大学時代に何を頑張りましたか?」と聞かれ、「学業を特に頑張りました。4年間無利子奨学金を借り、■■の勉強を熱心にしていましたので、その経験を御社の強みの1つである○○という分野で活かしたいと考えています」と答えられることができれば、企業側はポジティブな印象を持つことでしょう。

 おそらく “サークルの副部長” といった肩書きでアピールする学生よりも効果的だと思われます。

 優秀な一面を持つ人物にはスポンサーが現れるといったエピソードは学業の分野でもあったということです。鹿児島県に追随する動きがあっても良いと言えるのではないでしょうか。