沈静化する気配のないトランプ旋風、このまま共和党候補となる可能性も
「本命なき大統領選の候補者選び」と言われていたアメリカ共和党の候補者争いで実業家のドナルド・トランプ氏が勢いを保っています。
“キワモノ” 候補であり、いずれ脱落すると見ていた多くの評論家の予想とは真逆の展開が繰り広げられています。トランプ氏の強さはどこにあるのでしょうか。
立候補表明から過激な言動でメディアに登場し続けて来たトランプ氏は過去6ヶ月に渡り、全米支持率でほぼトップに立ち続けています。
昨年11月に脳外科医のベン・カーソン氏に首位を奪われた時期もありましたが、保守派の本命候補となったカーソン氏に主要メディアが集中砲火を浴びせたため、カーソン氏は徹底寸前にまで追い込まれています。
上記グラフは『リアル・クリア・ポリティクス』というサイトがアイオワ州での党員集会後に実施した世論調査までが反映されています。したがって、2月第2週以降に起きたことが反映されていないことを考慮する必要があります。
その間に何が起きていたのかを時系列で確認することにしましょう。
クルーズの勝利とルビオの躍進
現地2月1日に行われたアイオワ州での共和党党員集会では、宗教保守(キリスト教福音派)のテッド・クルーズ氏が勝ち、事前調査で首位にいたドナルド・トランプ氏は2位でした。
これはクルーズ氏が宗教右派の多いアイオワに集中的に選挙資金を投じていたこともあり、結果は予想範囲だったと言えるでしょう。メディアもこの結果をポジティブに報じました。
なぜか。それはマルコ・ルビオ氏が 23% の得票を記録し、3位に付けたからです。
“保守強硬派” が1位(28%)、2位(24%)が “暴言王” のポピュリスト。そのような中で、大方の予想に反して “穏健派” が3位と大健闘したのですから、主要メディアや有識者は「共和党の候補者争いは正常化した」と大々的に報じました。
ところが、その期待が長続きすることはありませんでした。
2月6日の討論会で風向きが急変
第2戦のニューハンプシャー州での予備選を前に行われた討論会で、共和党候補の本命と目されたルビオ氏が自滅します。
今後最も支持率を伸ばす余地のあったルビオ氏ですが、候補の1人だったクリスティー氏との論戦で経験不足が露呈。質問に対し、テレビ広告でのキャッチフレーズを繰り返し述べることが精一杯で “人間ジュークボックス” と酷評される有様でした。
これにより、ルビオ氏は事実上の本命候補である単独3番手としての座を失い、団子状態から抜け出すためのポイント集めを強いられる状態に戻る羽目になりました。
トランプ氏、ニューハンプシャー州で勝利
2月8日に行われたニューハンプシャー州での予備選はトランプ氏が勝利。ルビオ氏が討論会で自滅したこともあり、トランプ氏が勢いも盛り返した形となりました。
この予備選で2位に入ったのはケーシック氏でしたが、これは選挙資金をニューハンプシャーに重点投入した結果であり、2月20日に行われるサウスカロナイナ州でも有力候補として残れるかは不透明です。また、ニューヨークタイムズ紙が応援する共和党候補という点もプラス要素とは言い切れません。
既存の支配者(エスタブリッシュ)層の候補が政党を問わず、軒並み逆風を受けている現状を考えると政治家候補は苦戦を余儀なくされると見ることができるからです。
サウスカロライナで勢いづくのはどの候補か
『リアル・クリア・ポリティクス』がまとめたサウスカロライナ州での支持率はトランプ氏が支持率で2位以下にダブルスコアをつけて独走しています。
ただ、サウスカロライナ州もキリスト教福音派の影響が強いため、クルーズ氏が獲得する票は世論調査よりも高くなることが予想されます。
ルビオ氏、ケーシック氏、ブッシュ氏はどの候補も決め手を欠くだけに「ライバル候補の撤退待ち」が精一杯だと思われます。おそらく資金が尽きた候補から撤退することになるでしょう。
なお、2月16日の時点で共和党の各候補者が獲得した代議士数は下表のとおりです。
Name | IA | NH | Total |
---|---|---|---|
ドナルド・トランプ | 7 | 10 | 17 |
テッド・クルーズ | 8 | 3 | 11 |
マルコ・ルビオ | 7 | 3 | 10 |
ジョン・ケーシック | 1 | 4 | 5 |
ジェブ・ブッシュ | 1 | 3 | 4 |
ベン・カーソン | 3 | 0 | 3 |
どの候補が大統領候補として指名を受けることになるのか、依然として予断を許さない状況が続いていると言えるでしょう。大混戦であることだけは間違いないと思われます。