「原発は危ない」と叫び続ける京都が北陸新幹線を必死に誘致する皮肉な状況

 JR 西が管轄する北陸新幹線の福井以西ルートをどうするのかで、綱引きが活発になっていることを NHK が報じています。

 5つほどの経路が提示されているのですが、その中で京都府が主張するルートが明らかに地元への利権誘導の色合いが強いことが見て取れるからです。

 

画像:NHKが報じた北陸新幹線の福井・敦賀以西のルート案

 京都府が日本海に面しているということはあまり知られてなく、そのため京都府北部の人口減少が著しくなっているという南北格差を抱えています。

 その解消策として、北陸新幹線を舞鶴に誘致しようと画策しているのですが、良い見通しを立てることはできていません。

 京都府も加盟している関西広域連合では敦賀から米原に接続する『米原ルート』を推すことに決定したはずなのですが、それだと京都府の南北格差が是正されないとのことで、「如何に京都府内を北陸新幹線のルートに組み込むか」に比重を移したものと思われます。

 

 しかし、現実には京都府の思惑通りには行かないでしょう。むしろ、京都府がこれまでメディア向けに発言してきたことがさらに格差を拡大するのではないかと予想されます。

 その理由は原子力発電所に対する京都府の姿勢です。

 京都府は滋賀県と同じく、メディアに対して盛んに “原発の危険性” を訴え、原発立地の30キロ圏内にある自治体にも立地自治体と同等の権限を政府に対して求めています。

 これは舞鶴などの京都府北部や滋賀県北西部に位置する自治体にとってはマイナス以外の何物でもないでしょう。

 

 知事職にある人物がメディアの前で「対策は不十分だ。事故は起きる」「事故の際に半径30キロ圏内は危ない」という内容を繰り返しメディアで主張し続けているのです。

 素直な住民ほど知事の話に耳を傾けるでしょうし、中には「だったら、新しい街に引っ越そうかな」と住み慣れた街を離れることを決断する住民も出て来るでしょう。

 また、そのような “危険極まりない地域” に新幹線のルートを検討するなど以ての外という意見が発生することが想定されます。その結果として、京都府や滋賀県知事の(反原発という政治的な)意向を反映する形で、『米原ルート』が選択されることへの強烈な追い風となるでしょう。

 

 『米原ルート』だけが “原発銀座” とも呼ばれる福井県若狭湾沿岸部を極力回避するルートであり、反原発や脱原発を主張する姿勢と矛盾する点はありません。

 ですが、反原発を声高に訴えておきながら、『米原ルート』以外を要求するのであれば明らかな矛盾が生じます。原発が危ないのであれば、「原発廃炉の目処が立ってから、新幹線の敷設作業を開始するべき」と主張すべきなのです。

 逆に「原発は危なくない」のであれば、これまでの反原発運動への発言はすべてパフォーマンスだったと認め、政治家としての責任を取らなければなりません。また、自分たちが行ったパフォーマンスの結果、高額な電気代を支払うことを余儀なくされた関電圏内の消費者にお詫び金(=電気代上昇分の給付金)を支払って当然でしょう。

 「地元住民の安全が脅かされる」とメディアの前で主張しておきながら、“地域活性化のため” というお題目でそれらの地域で工事を行う作業を強いる姿勢は明らかに矛盾しているからです。

 

 少なくとも、京都府の姿勢が非常に見苦しいことだけは確かです。「都があったこと」を誇りに思っているようですが、そのことにあぐらをかいていたことのツケを支払っているだけのことでしょう。

 そもそも、舞鶴などの北部も京都市内からみれば “存在の薄い地域” でしかないはずです。京都市内を訪れる観光客を京都府北部へ誘導できない現状を新幹線が出来たからと言って足を伸ばす人は限定的と言えるのではないでしょうか。