資金面で劣るJのクラブがアジアで勝つには“戦術重視”が欠かせない 「カルチョ化できますか?」という話

 2007年に浦和レッズ、2008年にガンバ大阪が AFC アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を勝ち取ってから、Jのクラブは決勝の舞台に立つことすらできない状況が続いています。

 Jリーグは自身のメンツがかかっていることもあり、当時よりは積極的な支援策を打ち出しています。しかし、その効果はあまり期待できないでしょう。なぜなら、ACL に注力することによって、チームが得られるリターンが頭打ちだからです。

 

 現時点での最大の問題は「大会参加による収益増という “見返り” が割り合わないこと」と言えるでしょう。今シーズンの大会から優勝賞金が倍増されるとは言え、それによってJリーグ優勝賞金より多くなったのが実状ですから、ACL に注力する理由はJのクラブには存在しなかったのです。

 レッズやガンバは過去に ACL のタイトルを勝ち取っていますが、この2チームはJの他クラブと比較して高額なスポンサー料を勝ち取れたでしょうか。

 トヨタのバックアップを受けるグランパスや日産のバックアップがあるマリノスと資金力で差が生まれなかったことが現実なのです。これではJリーグがどれだけ ACL に注力するよう音頭取りをしても、効果は生まれなくて当然です。

 

 また、Jリーグが発足時にプロ野球を反面教師としたことに対する弊害が現れ始めていることも見落とせません。

 巨人軍のような “Jリーグよりも発言力のある全国区の人気チーム” が出現することの芽を徹底的に摘み取ることに成功したJリーグでしたが、その結果として、日本国外では普通に存在するビッグクラブはJリーグに生まれることはありませんでした。

 非常に拮抗した国内リーグが誕生したことはJリーグの狙い通りだったでしょう。しかし、国外とチームと対戦する際には、この方針は完全に裏目に出ます。

 例えば、中国や韓国チームの強さを10段階評価で示すと『9』のチームが ACL に出場してきます。一方のJのクラブは拮抗させることに主眼を置いた経緯から、どのチームも『7.5』前後の勢力に留まっているのです。

 これでは、力負けすることは当然でしょう。また、資金力を持ったオーナーが自身の名声を高めるためにサッカークラブに投資をして、国際タイトルを狙うのですから、資金面でもJのクラブが太刀打ちできるレベルが遠のきつつあります。

 

 資金力の大きいクラブの方が良い選手を獲得できる傾向にあります。そうなると、Jのクラブは中国や韓国のビッグクラブとは真っ向勝負でねじ伏せられる可能性は低くなります。

 必然的に資金力によって生じた差を何らかの方法で埋めなければなりません。ただ、Jリーグ側がこれまで自らが進めて来た方針を撤回する保証がないだけに、リーグが足を引っ張り続ける可能性があることを念頭に各クラブが工夫を凝らす必要があると言えるでしょう。

 カルチョ(イタリア)のように戦術面を徹底的に磨き上げることがリーグの方針に左右されず、効果的な対策方法であることに間違いありません。プロ野球もメジャーと比較すれば、資金力に劣りますが、徹底したチーム練習で戦術面で上回っているため、台頭に渡り合うことが可能で世界一の座にも君臨しているのです。

 問題は一朝一夕で戦術面が成熟することはないことです。

 また、ストークシティ(イングランド、プレミアリーグ)の本拠地であるブリタニア・スタジアムのような強風の吹き荒れ続ける “地の利を活かすこと” もアジアの舞台で勝ち上がるためには有力なのですが、この手の特殊要件はJリーグ自体が拒絶することでしょう。

 

 格下のチームが何の策も用意せずに真っ向勝負を挑むことはあまりに無鉄砲すぎることです。その姿勢を強要していることがリーグ側であることにJリーグが気づかない限り、Jのクラブがアジアで戴冠する未来はまずやって来ないでしょう。