MOX燃料がウラン燃料9倍の価格? 化石燃料の増加分と比べればチップ以下の値段ですけど

 朝日新聞が再稼働した高浜原発3・4号機(関西電力)で利用する MOX 燃料がウラン燃料と比較すると価格が9倍であり、コスト面に優れないと主張する記事を書いています。

 この記事で失笑を呼び起こすのは「原子力発電におけるコスト比較」に終始していることと言えるでしょう。

 

 使用済み核燃料を再処理して作るウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料は、通常のウラン燃料より数倍高価なことが、財務省の貿易統計などから分かった。再稼働した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)などプルサーマル発電を行う原発で使われるが値上がり傾向がうかがえ、高浜で使うMOX燃料は1本約9億円となっている。

 (中略)

 プルトニウムの日本保有量(47・8トン)を増やさない狙いもあるが、国内の再処理施設は未完成なうえ、コスト面でも利点が乏しいことが浮き彫りになった。

 

 要するにウラン燃料は1本約1億円であるが、MOX 燃料は1本約9億円を要する。コスト面でも利点に乏しい燃料で発電する意味はあるのかと批判する記事になっています。

 朝日新聞の主張に賛同する読者も多いでしょう。しかし、発電手法全体で見ると、都合良いロジックだけを切り取りしていることが浮き彫りになります。

 

 『コスト』という観点で論じるのであれば、原子力発電が停止している際に代替発電として利用されている火力発電と比較する必要があります。

 経産省では資源エネルギー庁の試算した数値として原発が賄っていたベースロード電源を火力が代替していると見なすと、2014年度は 3.7 兆円の燃料費増加が起きると資産しています。(PDF ファイル

 つまり、火力燃料増加費と MOX 燃料の費用費を比較しないと朝日新聞が主張するコスト面での優劣はつけれないのです。

画像:原発停止による燃料費上昇試算

 では、実際に高浜原発が稼働した際のコスト比較をしてみることにしましょう。

 

 関西電力によりますと、再稼働する高浜原発3・4号機は加圧水型で出力はどちらも 87.0 万kW であると明記されています。

 原発の定期検査は13ヶ月後になりますので、3号機/4号機ともに2016年はフル稼働を想定できるでしょう。高浜原発3・4号機によって発電される電力量は次の式から計算することが可能です。

(発電量)=(定格出力)×(稼働日時)×(設備利用率)

 それでは、この式を用いて、2月下旬から営業運転が始まった3号機と3月下旬から営業運転が始まる4号機による2016年内での発電量を求めることにしましょう。

  • 高浜3号機:(87万kW)×(24h×365日×10/12)×(100%)=63億5100万kWh
  • 高浜4号機:(87万kW)×(24h×365日×9/12)×(100%)=57億1590万kWh

 上記のように発電量を求めることができました。さて、比較する必要があるのは「これらの発電量に費やすコスト」であることは言うまでもありません。

 

 関西電力が平成27年(2015年)4月21日に電力料金審査専門小委員会に申請した際の単価を基に算出することにしましょう。燃料費の算定内訳(PDF)は以下のようになっています。

画像:燃料費の算定内訳

 原子力は単価(円 / kWh)が 0.75 であるのに対し、火力は 10.75 となっています。火力についても、石油系であれば 14.72 であり、LNG でも 10.05 と原子力よりコストで劣ることが明らかです。

 3号機の実燃料費を試算すると、次のようになります。

  • 原子力:0.75(円 / kWh)×63億5100万(kWh)=47億6325万円
  • 火力:10.75(円 / kWh)×63億5100万(kWh)=682億7325万円
  • 石油系:14.72(円 / kWh)×63億5100万(kWh)=934億8672万円
  • LNG系:10.05(円 / kWh)×63億5100万(kWh)=638億2755万円

 つまり、火力発電で対応している高浜原発3号機の発電量を原子力発電に戻すとおよそ600億円分の燃料費(=コスト)が削減できる訳です。この数値は3月から12月までの10ヶ月の値であり、月額では約60億円分に相当するのです。

 

 朝日新聞は記事で「MOX 燃料がウラン燃料の9倍もする価格」と批判していましたが、その燃料を使った発電手法の10倍以上もする価格の電力を利用することを強いる理由を明確にする必要があるでしょう。

 また、高浜原発前で「フクシマを忘れるな」などと主張する活動家が全国から駆けつけているようですが、反原発を訴える方々が負担してくれるのでしょうか。

 原子力発電がコスト面でリーズナブルであるという彼らにとって不都合な真実を隠し続ける限り、反原発派が支持を集めることはないでしょう。なぜなら、電気代を支払うのは全国民に共通することだからです。

 わざわざ電気料金を高騰化させたツケを支払うのはこれからが本番と言えるでしょう。高額なコストを要する地域に民間企業が設備投資などで多額の資金を費やすことは魅力がないことを政治家や地方自治体は理解しなければなりません。