内部告発通報窓口の担当弁護士、通報者を京都市に伝えるも取材には守秘義務を根拠に逃走

 京都新聞によりますと、京都市の公益通報外部窓口を担当する弁護士が該当制度を利用した職員の氏名を市側に伝えていたとのことです。

 この弁護士は保護されるべき対象の職員を裏切る行為をした訳ですから、何らかの懲戒処分が科されるべきだと言えるでしょう。

 

 職員や市によると、児童福祉法違反容疑で児童養護施設の施設長が逮捕された事件で、職員は市児童相談所の対応が遅れたことを訴えるため、昨年3月、公益通報外部窓口にメールで通報した。職員は昨年12月、内部記録を持ち出したとして停職3日の懲戒処分を受け、市人事委員会に「公益通報のためだ」と処分取り消しを求める不服申し立てを行った。

 (中略)

 職員によると、弁護士は伝達を認め、職員の通報メールに「私が通報者だと推認される覚悟はある。市コンプライアンス推進室から私に直接問い合わせていただく方が効率的かとも考えている」と記載していたことを理由に挙げたという。

 

 京都市に職員の名前を伝えていたのは後藤真孝(ごとうまさたか)弁護士でしょう。京都市のホームページにある『公益通報制度』の “京都市役所外部の窓口” の担当弁護士として名前が明記されているからです。

京都市:公益通報制度

 通報対象者の名前を本人の了承を得ずに京都市に伝えたことについては、後藤弁護士は責任を取る必要があると言えるでしょう。また、京都弁護士会も後藤弁護士に対して懲戒処分を科すべきです。

 

 内部通報が行われたきっかけとなったのは京都市左京区の社会福祉法人「迦陵園(かりょうえん)」の施設長、松浦弘和容疑者が2015年9月に逮捕された事件だと思われます。

  • 2014年8月5日、松浦容疑者が犯行(児童福祉法違反)に及ぶ
  • 2015年3月、職員が公益通報外部窓口にメールで通報
  • 2015年9月、京都府警が松浦容疑者を逮捕
  • 2015年12月、「内部記録を持ち出した」として京都市が職員に懲戒処分を科す

 このやりとりがあった中で、職員が名前が知れていることを不審に思い、担当弁護士を疑ったことが内部告発者名漏洩事件の発端となりました。

 

 施設内での出来事を内部告発する訳ですから、告発者として該当職員に疑いの目が向けられることは覚悟の上で通報したということでしょう。

 後藤真孝弁護士は「告発者は本人が特定されても問題ない」と考えたようですが、もしそうだとすれば、公益通報制度などを利用しないことが普通です。なぜなら、コンプライアンス部門に業務で利用するメールアカウントで直接訴えれば済むからです。

 わざわざ公益通報制度を利用している訳ですから、本人情報を公開して良いという明確な意思表示を確認しない限り、オープンにすべきことではありません。この原則を理解していない弁護士がいたことに驚きですが、要注意人物の弁護士として避けるべきでしょう。