SPEEDI の活用を希望するなら、欠点があることを理解した上で使用せよ

 自治体が放射性物質の拡散を予測する SPEEDI (スピーディー)を活用することを政府は容認する考えであると朝日新聞が伝えています。

 ただ、福島第一原発で生じた事故の際、SPEEDI を利用できなかった理由を(SPEEDI の活用を希望する)自治体がきちんと把握しているのかに疑問が残ります。

 

 政府は11日、原発事故時に放射性物質の拡散を予測するSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)について、自治体が避難指示に活用することを「妨げない」とする見解を示した。東京電力福島第一原発事故で正確な予測ができず、国は使わないことを決めたが、自治体は活用を訴えていた。

 

 放射性物質の拡散を予想する SPEEDI というシステムですが、活用するには大事な前提条件が存在します。それは「大気中に放出される放射性物質の量を正確に把握できていること」です。

 火事の場合を例に出しますと、「火元と規模が分かっていれば火災範囲が予想できる」と考えと基本は同じです。

 では、福島第一原発の事故当時に正確な予測ができなかった理由は何だったのか。それは原発から放出されている放射性物質の量を把握できない状況だったからです。システムが正常に作動していても、システムに入力するデータを用意できなければ、何の予測もできません。

 いい加減な情報を世に送り出したとしても、なあなあで済むのは既得権益に守られているメディアぐらいなものでしょう。特に公的機関が発表する情報がデタラメなものでは大きなバッシングを受けるのは目に見えています。

 

 政府のスタンスとしては「(放射性物質の拡散を予測するという点で確実に活用できるものではないが、)自治体が活用を望むのであれば、自己責任で使って構わない」というものでしょう。

 つまり、SPEEDI の運用に不可欠な大気中に放出される放射性物質の量に関する測定は自治体が行うということを意味しているのです。ここで問題となるのは「誰がどうやって放射性物質の放出量を測定するのか」ということになります。

 当たり前のことですが、SPEEDI に入力する値が正確値からズレるほど、予測精度は悪化します。面倒な対応を政府に丸投げしてきた自治体がきちんとした測定値を24時間365日用意し続けることができるでしょうか。

 少なくとも、リスクを取らない “事なかれ主義” が染み付いたお役所が SPEEDI を活用することは不可能だと思われます。