教職員もミスをする前提で指導方針を策定しないと、広島県府中町のようなケースは再発するだろう

 広島県府中町の中学3年の男子生徒が自殺した問題が NHK などのメディアで報じられ、学校側の対応があまりに杜撰だったことが明らかになりつつあります。

 どこかで幕引きが計られると思うのですが、「教員の指導に間違いはない」という前提に立った再発防止策を講じると、同じような悲劇が起きる可能性は事件前と変わらないと言わざるを得ないでしょう。

 

 この問題の時系列は以下のように整理することができます。

  • 2013年:男子生徒BとCの2名が広島市内のコンビニで万引きを行う
  • 現場にいなかった男子生徒Aの名が進路指導用の資料に誤って掲載される
  • 進路指導会議で、Aの名前が誤って掲載されていることを教員が指摘
    → 修正はされず
  • 担任によると、廊下での立ち話でAが中学1年時に万引きの飛行歴を確認
    → Aの希望する指定校推薦は不可能と複数回伝達
  • Aの自殺により、問題がマスコミを通じて表面化
  • 万引きをしていた生徒は指定校推薦を得ていたことも明るみに出る

 

 万が一、「本来、進路指導用の資料に男子生徒BとCの名前が記されていなければならないにも関わらず、(自殺した)男子生徒Aの名前が記されていた」とすれば大問題でしょう。『B、Cは万引きによる補導歴あり』とすべき部分が『Aは万引きによる補導歴あり』と記載されていれば、到底容認できないケースだからです。

 ですが、人間のやることですから多少のミスは発生します。ミスや誤りが発覚した場合に的確な初動を行えていれば、今回の悲劇は確実に防ぐことができたと言えるでしょう。

 

 学校の先生が “完璧な存在” ではないことをほとんどの人が経験的に知っているはずです。

 テストを返却された際に採点ミスを指摘する生徒がクラスに何人かいることは定番行事化していたでしょう。その指摘を受けた教員は速やかに修正をすることが一般的です。「模範解答を聞いてから書き込んだよね?」と生徒の責任にする教師はまずいないはずです。

 これと同じことを進路指導の会議でも行われていれば、今回の悲劇は回避できた可能性が高いと思われます。

 「男子生徒Aの名前が誤って記載されている」と指摘があった会議で、どの教員が誤った情報を修正するタスクを持っているのかを明確にしておくべきだったのです。

 つまり、5月の進路指導会議で指摘があったなら、「次回、6月に行われる進路指導会議までに(データを入力した)D先生の責任で情報を修正して下さい。きちんと変更がされたかは次回の会議でチェックします」と会議を取り仕切る立場の教員が明言し、議事録に残しておく必要がありました。

 

 府中緑ケ丘中学校でのケースは「指摘が行われたことで、誰かが修正するだろう」という心理が働き、結果的に修正が行われないまま、最悪の結末を向けることとなりました。

 また、担任が男子生徒Aと廊下の立ち話による面談を行ったということが発表されていますが、担任側の証言だけであり、発言そのものの信憑性に疑問符が残ると言わざるをえないものがあります。

 「ミスは起きるもので、責任の所在を明確にすること」と「進路指導については生徒の両親にも説明できるようエビデンス(証拠)を残しておくこと」が不可欠です。少なくとも、メディアに取り上げられてバッシングを引き起こすような対応をしてはならないということが肝になります。

 どういった対応が炎上やバッシングを起こすのかが分からないのであれば、指導する立場と言えるのではないでしょうか。