アメリカ大統領選、共和党の焦点は「トランプ氏が代議員の過半数を確保できるか」に移る

 3月15日に行われた共和党の予備選においても、ドナルド・トランプ氏の躍進は止まる気配はありません。

画像:共和党の大統領候補による獲得代議員数

 獲得代議員数を621名にまで伸ばし、共和党の党大会が行われるまでに過半数である1237名まで届くかが最大の関心事になったと言えるでしょう。

 

 地元フロリダ州で(トランプ氏に)敗れたことで、ルビオ議員は大統領選からの撤退を表明したため、残るはドナルド・トランプ氏、テッド・クルーズ氏、ジョン・ケーシック氏の3名となりました。

 ただ、これまでの獲得した代議員数や、全米規模での世論調査からはトランプ氏がこのまま首位で終える可能性が高く、クルーズ氏やケーシック氏が首位を奪還する見込みは低いと言えるでしょう。

  1. ドナルド・トランプ氏:獲得代議員数 621 (あと616名で過半数)
  2. テッド・クルーズ氏:獲得代議員数 395 (あと822名)
  3. ジョン・ケーシック氏:獲得代議員数 138 (あと1099名)

 共和党主流派の視点で述べると、トランプ氏が残された州の予備選で616名の代議員を獲得した場合は共和党としてドナルド・トランプ氏を推薦しないといけない状況に追いつめられることになります。

 

 トランプ氏が獲得代議員数を1237以上に伸ばした場合、規定された “民主主義のルール” に則った勝者はトランプ氏であることは明白です。

 ところが、共和党が決めた民主主義のルールで「自分たちが期待する結果が得られなかった」という理由で党本部がトランプ氏の推薦を見送るようなことをすれば、民主主義を否定していることになるからです。

 もし、このような行為に踏み切れば、“自由と民主主義の国” であるアメリカでは致命的でしょう。やっていることは独裁政治と同じだからです。では、なぜクルーズ氏やケーシック氏は(勝ち目が少なくなった現状でも)撤退しないのか。

 

 それは、トランプ氏が代議員数の過半数を獲得できなかった場合、共和党大会では既存議員である 自分たちにも逆転できる可能性があるからに他なりません。つまり、反トランプ票が過半数あるのだから、その票を自分が獲得できれば大逆転が起きることに賭けているのです。

 ただし、エスタブリッシュ層(既存の支配者層)への反発が共和党・民主党に関係なく広がっている現状ではギャンブル性が強い選択と言わざるを得ません。

 

 また、今後行われる共和党の予備選は「勝者総取り形式」の色合いが強くなり、地区首位になった候補が代議員の大部分を獲得する傾向となります。

表1:比例配分で行われる共和党の予備選日程と代議員数
日程 州名 代議員数
3月22日 ユタ 40
4月19日 ニューヨーク 95
4月26日 コネチカット 28
ロードアイランド 19
5月10日 ウエストバージニア 34
5月17日 オレゴン 28
5月24日 ワシントン 44
6月7日 ニューメキシコ 24
獲得可能代議員の合計数 312

 比例配分では300人ほどの代議員数が割り当てるため、仮にトランプ氏の得票率が 30% でも、100名弱の代議員数を獲得することを意味します。トランプ氏は過半数の代議員を獲得するまで残り616名。

 トップが獲得する代議員数で優遇される形式で行われる予備選で600人弱が割り当てられることを考えると、ギリギリの争いが最後まで行われる可能性が高いと言えるでしょう。

表2:勝者が優遇される共和党の予備選一覧
日程 州名 代議員数/方式
3月22日 アリゾナ 58(勝者総取り)
4月5日 ウィスコンシン 42(勝者優先配分)
4月26日 デラウェア 16(勝者総取り)
メリーランド 38(勝者優先配分)
ペンシルバニア 71(勝者優先配分)
5月3日 インディアナ 57(勝者優先配分)
5月10日 ネブラスカ 36(勝者総取り)
6月7日 カリフォルニア 172(勝者優先配分)
モンタナ 27(勝者総取り)
ニュージャージー 51(勝者総取り)
サウスダコタ 29(勝者総取り)
獲得可能代議員の合計数 597

 

 共和党の指名候補争いは最後まで混沌とした状況が続くものと思われます。消耗戦が繰り広げられると見て間違いないと言えるでしょう。