トランプ氏、在日米軍の撤退に言及 オール沖縄や左派の思わぬ味方に

 アメリカ大統領選で共和党の指名候補争いでトップに立つドナルド・トランプ氏が『ニューヨーク・タイムズ』に「日本が在日米軍の駐留費を増額しなければ、撤退も視野に入れている」と述べ、日米安保も見直しを希望しているとコメントしたことを NHK が伝えています。

 

 トランプ氏は「アメリカは強い軍事力を持った裕福な国だったが、もはやそうではない」と述べ、大統領に当選した場合、日本や韓国がアメリカ軍の駐留経費の負担を大幅に増額しなければ撤退させると主張しました。

 さらに日米安全保障条約について、「アメリカが攻撃されても日本は何もしないが、日本が攻撃されたらアメリカは駆けつけなければならず、不公平だ」としたうえで、「再交渉したい」と述べました。

 

 トランプ氏の発言はごく一部の極端な右派による主張ではなく、一般的なアメリカ人も感じている主張であることを認識する必要があります。

 最初の日米安全保障条約(旧安保条約)が締結されたのは第二次世界大戦後から間もない1951年でした。その後、1960年に新安保条約(60年安保)が批准されることになるのですが、社会情勢が当時とは大きく変わっていることが、アメリカ国内で条約内容の見直しを求める声が出ている理由です。

表1:国際情勢比較
1960年当時2015年現在
  • 『資本主義』と『共産主義』による覇権争い(=冷戦の構図)
  • 資本主義が生き残る
  • アメリカは『資本主義』陣営のリーダー
  • 世界唯一の超大国
  • 絶対的な立場
  • アメリカが世界一の経済圏
    アジアなどの台頭により絶対的な優位性を失う
  • 日本は途上国の経済規模(=戦後の混乱による共産主義化のリスクあり)
  • 日本は世界3位の経済圏
  • 『資本主義』陣営

 戦後、途上国の経済規模であった日本は『資本主義』と『共産主義』の狭間にあり、どちらの陣営にも傾く可能性がある状況でした。

 アメリカとしては全面戦争をして降伏させた国が敵対する共産主義陣営の一員として、再び敵対することは避ける必要があったため、資本主義陣営に留める必要があったことからも、日本の防衛を肩代わりする価値は存在しました。

 しかし、時代が流れ、日米条約が批准された当時とは環境が大きく変化したことで、条約の内容に不公平感が生じたのです。

 

 最大の変化は「日本が世界屈指の経済大国に成長したこと」でしょう。

 日本国内では防衛費が過去最高の5兆円を超えたことを懸念する声が一部から出ています。この数字は GDP 比で見ると、1% 以下に抑え込まれており、G7の主要国や中国・韓国が 2% 台の費用を費やしていることを考慮すると、半分以下であることを認識しなければなりません。

 アメリカは世界中に軍隊を駐留させていることもあり、GDP 比で 4% 弱と高い割合になっています。その結果、「世界屈指の経済国である日本が GDP 比で 1% 未満の軍事費支出であり、アメリカ軍が負担を強いられるアンフェアな状況である」という見方が広がっているのです。

 日本国内では世界第2位の経済大国に成長した中国に対し、日本から ODA が行われていることに批判の声があります。それと同じことが軍事費という点でアメリカでも日本に対して起きているのです。

 

 日米安保条約は1年前の予告により破棄することが可能な訳ですから、日本側はその場合に備えておく必要があることを意味します。

 「日本は “思いやり予算” を出しているではないか」と主張する人もいるでしょうが、主要国の軍事費標準である 2% になるには5兆円規模の支出をしていなければ、釣り合いません。単年度で2000億円弱なのですから、アンフェアと受け止められて当然と言えるでしょう。

 民進党(民主党)の細野豪志議員は自身のツイッターで、「日米同盟は戦後最大の外交資産」と述べています。

画像:細野豪志議員のツイート

 しかし、本気でそう考えているのであれば、安倍政権が安保法制で日米同盟をより強固にしようとしたことに反対していた民主党の考えと矛盾することを意味します。また、民主党の後継政党である民進党も安保法制に反対の立場ですから、国民の安全保障を蔑ろにしていると見られることでしょう。

 

 日米同盟破棄を受け、個別自衛権で安全保障を維持しようとすると、防衛費は最低でも倍増することが見積もられます。その場合は、予算の半分以上を占める社会保障費が削られることになることが濃厚です。

 それに加え、日本の周辺国(中国・韓国・北朝鮮など)が「日本の軍備増強」を理由に、それらの国々でも防衛費増強に走ることでしょう。その結果として、極東アジアの軍事的緊張が現在よりも高まった状態になると思われます。

 『非武装・中立国』という考え方もありますが、実際に採用すると、周辺国から軍事力を背景に占領されることはベルギーなどが証明しています。この考えが通用するなら、シリアやイラクでの騒乱はとっくに解決されているはずです。

 現実的なアイデアとしては、在日米軍の規模に応じて日本側の負担額に折り合いをつけることになるでしょう。アメリカ水準の負担では(高額であった場合)日本国内から批判が大きくなりますので、自衛隊水準の負担額を日本からオファーすることが鍵と言えるでしょう。

 自衛隊の水準額から算出された日本側の負担額がアメリカ水準より低かった場合は、アメリカ軍にはコスト削減できる余地があることを意味しているため、日本への不満が減ることが期待できるからです。

 

 後先を考えず、「在日アメリカ軍は日本から出て行け」というキャンペーンを展開しているオール沖縄や朝日新聞などはドナルド・トランプ氏の主張を大きく取り上げるべきでしょう。

 アメリカ軍基地の跡地利用は、撤退後に考えれば良いと思っているのでしょうから、渡りに船だと思われます。トランプ旋風の恩恵を受けることができる勢力がサヨクだったことは興味深いことだと言えるのではないでしょうか。