「解雇が容易になると、企業の雇用が促進される」というロジック

 従業員が解雇されることは失業を意味し、一般的には失業率が上がることになります。しかし、フランスでは解雇の条件を緩和することで企業の雇用を促進しようという目的で法律の改正を行う動きを見せています。

 

 フランス政府は、景気の低迷が続くなかで、企業の雇用を促進しようと労働法の改正を目指しています。

 これに対して労働組合や学生からは、「解雇の条件を緩和して事実上、解雇を容易にするなど雇用主側に有利な改正だ」などと反発が強まっていて、31日には、フランス国内のおよそ70か所で一斉に抗議デモが行われ、警察の発表でおよそ39万人が参加しました。

 

 労働者側から見れば、解雇されるリスクは大きいと言えるでしょう。しかし、経営者側(=雇用主側)から見れば、“解雇できないリスク” は割に合わないものなのです。

 「労働者を解雇できない」という縛りはビジネスの足かせになります。

 例えば、20年前の技術水準と手法で生産された商品でトップシェアを誇っているものがどれだけあるでしょうか。身の回りの家電製品は小型化・高性能化・インターネット対応となっており、昔のままでは太刀打ちできません。

 当然、企業は競争環境で生き残ろうとすれば、通用しなくなった技術やノウハウしか持たない労働者を入れ替える必要に迫られるのです。

 

 では、なぜ解雇規制を緩和すると、企業の雇用が促進されるという考えがでてくるのでしょうか。

 それは「捨てる神あれば拾う神あり」ということが起きるからです。例えば、新聞や雑誌などのメディア業界はネットに押され、紙媒体を主戦場にしてきた従業員の多くは捨てられる運命にあります。しかし、彼らにも “拾う神” は存在します。

 その1つはプロスポーツチームでしょう。興行を収益主体とするプロスポーツはマッチデー・プログラムを発行することで、ファンに活動内容をアピールし、チームの売上アップを狙っています。

 最近ではスマートフォンやアプリからマッチデー・プログラムが楽しめるようになりつつありますが、紙媒体であった方が目立ちますし、記念品にもなります。そこに掲載する内容ある記事を作るのはメディアの得意分野のはずです。

 読者が求める記事を執筆できる取材力があると認められれば、チームのファンが求める記事を選手に取材してマッチデー・プログラムに掲載することは問題ないと言えるでしょう。

 

 ビジネスの形態を変化させようとする企業からすれば、不要になる部門の従業員を(金銭解雇などで)解雇することへのハードルが下がることは歓迎すべきことです。別の部門で新たなに人員を雇用することができるのですから、ポジティブなことと捉えられます。

 むしろ、一昔前の技術や知識しか持たず、解雇されるリスクがなく過剰に守られている従業員の存在の方を問題視すべきでしょう。

 彼らが企業の体力を消耗させ、問題を発生させている元凶なのですから、厳しい視線を向けなければなりません。少なくとも、本業よりデモ活動に注力する労働者は解雇対象になるだけの理由があると言えるのではないでしょうか。