乗用車市場動向;必要性を感じない若者層が敬遠し、高齢層が3割を占める

 一般社団法人『日本自動車工業会』がホームページ上で、2015年度乗用車市場動向調査の概要を発表しました。

 首都圏や地方都市圏など公共交通機関網が整備されきっていない周辺部で保有率が高く、独身期や高齢期の自動車保有率は低いとの調査結果が出たとのことです。

 

 自動車は渋滞に巻き込まれるリスクがあります。そのため、通勤・通学には遅刻するリスクを回避するために鉄道網など公共交通機関が整備されているのであれば、そちらを利用する人が多くなることでしょう。

 自動車ユーザーの特性と使用状況は報告書の中で次のように指摘されています。

  1. ユーザー層の特性:高齢層比率は安定。女性層の増加が継続し、主運転者のほぼ半数を占める
    • 主運転者の世帯ライフステージは高齢期が1/4を占める。続柄は家計の中心者が約6割
    • 主運転者における女性比率は5割弱。60 歳以上の高齢層が1/3を占める
  2. 使用状況:「買物・用足し」中心の使用は変わらず。維持費は約5割が負担感を感じている
    • 主使用用途は「買物・用足し」が4割強。月間走行距離は350kmと減少傾向
    • 維持費の「負担感大きい」計は52%。「車検代」「自動車税」「自動車重量税」「任意保険料」は7割以上が負担を感じている
    • 実燃費は7~12km/lが4割強

 

 少子高齢化が言われる日本ですが、自動車ユーザー層からもそのことが言えるでしょう。現時点でドライバーの 25% が高齢期に入っており、この数値はますます増える傾向にあると予想されます。

 したがって、高齢者に多い自動車事故への対策を講じることがメーカー側に求められることは言うまでもないことです。

 その典型例は認知症ドライバーによる自動車事故でしょう。高速道路を逆走する、歩道を走行するなどの問題ある運転が行われた結果、事故が発生したというニュースがメディアで見聞きする機会が増えています。

 事故が起きれば、保険会社の支払いが増えるため、結果的に保険料が高額になります。これは所得の少ない現役世代(特に若年層)にとっては車を必要としない生活スタイルを余儀なくされる大きな理由となるため、悠長に構えている余裕は自動車業界にはないと思われます。

 

 その若年層への車に関する分析は次のように記載されています。

  • 車関心層は3割程度。3割は全く関心なし
    • 関心が高いのは「男性既婚」「男性単身」。女性の関心度はやや低い
  • 車購入意向層は4割強。非意向層が5割を超える
    • 購入意向が高いのは「女性既婚」「同居家族のいる男性」「世帯保有あり層」と関心層とはやや異なる
    • 買いたくない理由は「買わなくても生活できる」「今まで以上にお金がかかる」「車以外に使いたい」。特に車の必要性が低いことが理由
  • 車については利便性向上のメリットを認識している一方で経済的負担感によるデメリットも強く感じている
    • 「ガソリンや駐車場代など維持にお金がかかる」「購入するのに多くのお金がかかる」「重いものでも楽に運べる」「行動範囲が広げられる」がイメージ上位
    • 車購入意向層ではポジティブなイメージも高い一方で、経済的ネガティブなイメージも高く、買いたい気持ちはあっても購入には至っていない一因と思われる

 要するに「車を買うのが当たり前」「持ち家を購入することが当たり前」という時代は過ぎ去ったということです。

 現在は終身雇用で誰もが右肩上がりの給料が約束された時代ではありませんし、生涯収入の見通しも難しくなっています。そのため、出費が大きくなる買い物については「経済的な合理性があるのか」という点が昔よりもシビアに査定されていることが、現実にはあります。

 “生活の足” である自動車を購入できる資金力を持たない若年層ほど、自動車がなくても生活を送ることが可能な都市部への流れることでしょう。その結果、(首都圏や地方都市圏の)周辺部で人口減少による過疎化が進行することになるのです。

 

 お金にシビアになった若者に「運転する楽しさ」を訴える CM で語りかけたとしても、彼らが購入へと向かうことはないでしょう。なぜなら、車の購入が自らの生活を苦しくなる要因ことをちゃんと理解しているからです。

 1週間に1回使うかどうかも分からないモノに大金をかける余裕のある若年層はごく少数であることを理解した上で、自動車業界は日本の国内市場に対してアクションを起こす必要があると言えるのではないでしょうか。