「パナマ文章を調べろデモ」をやろうと考えている皆様へ
『パナマ文書』の存在がメディアで報じられてから、日本政府が調査の意向を示さなかったことに不満を覚え、デモ活動を考えている人々が一部にはいるようです。
ですが、止めておくべきでしょう。なぜなら、自身が無学であることを世間に宣伝するだけになるリスクが非常に高いからです。
まず、“税金逃れ” について対応するのは政府ではありません。国税局が調査を行います。
そして、当たり前のことですが、事前に「本年度は △△ 社の税務調査を行います」という予告をすることはありません。もし、税務調査の日程を対象企業に漏洩すれば、国家公務員法違反を問われることになるからです。
税務調査の日程を事前に漏らしたとして、京都府警は23日、国家公務員法違反(守秘義務)の疑いで、大阪国税局伏見税務署管理運営第2部門の上席国税徴収官、佐土原桜茂(えいしげ)容疑者(48)=京都市山科区=を逮捕した。
(中略)
逮捕容疑は25年9月25日、税務調査の日程を、調査先の業者と関係のある団体の元幹部の60代男性に漏らしたとしている。団体は在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の在日本朝鮮京都府商工会。
産経新聞が報じたように調査に入る日程が事前に分かっていれば、“ヤバい” 取引資料は即座に廃棄するでしょう。なぜなら、証拠がなければ脱税行為で罪に問われることがないからです。
そして、国税局が内密に調査するには理由があります。それは『加算税』による “行政制裁” を科すことが可能だからです。
例えば、副業などで100万円の収入を申告せずに隠していたことが税務調査で発覚すると、無申告加算税で17万5千円が上乗せされます。
計算式:50万円× 15% + (100万円ー50万円)× 20% = 7.5+10= 17.5
仮に、仮装隠蔽を行うなどの事実があった場合は重加算税(加算税率:40%)が適用され、罰金額は40万円と痛い目を見ることになります。
当然、隠していた金額が大きければ、加算税として支払わなければならない額も大きくなります。もし、払うことができなかったり、支払いを拒めば、延滞税が科されます。
「自己破産などで逃げ切れるでは」と考える人もいるでしょう。しかし、破産法には以下のような記述があり、逃げ切れる見込みは低いと言えるでしょう。
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
取り立てる側の国税局が『パナマ文書』の存在を無視することなど考えられません。
パリポタの日本語訳者である松岡佑子氏の生活実態が日本国内にあったとして35億円の申告漏れ、武田薬品工業は1223億円の申告漏れ、日本IBMは4千億円超の申告漏れを指摘されました。これは IBM のような外資系企業であっても日本国内で活動しているのであれば、日本で課税対象となることを意味しています。
「パナマ文書を調べろ」と主張する人々は、まずは自分たちが基礎知識を身につけるべきです。少なくとも、「企業の内部留保に課税しろ」と主張しているようでは話になりません。
ジャーナリストたちによる発表内容が正しい保証がないのですから、『英語』と『会計』の知識を持ち合わせていなければ、間違った情報に引っ張られる可能性が大いに存在します。
おそらく、デモを目論む人々が糾弾したい大企業が非合法な脱税に手を染めている可能性は低いでしょう。彼らは “倫理的に正しいとは言えないが、合法として認められた方法” を採用しているのですから、そのことを無視して非難することは己の無知をさらけ出すことになるのではないでしょうか。