千葉・市川の保育園新設中止の理由は子どもの声ではなく、周辺の道路環境だ

 千葉県市川市で今月開園予定だった社会福祉法人が運営する保育園が周辺住民の反対によって、中止されていたことが NHK などのメディアが報じています。

 このニュースを伝えた多くのメディアが「子供の声がうるさくなるどなして」と反対運動の原因が子供の声であると決めつけていますが、実態とは大きくかけ離れていると言わざるを得ません。

 

 映像で報じたメディアは保育園の開園予定地に足を運んだはずです。彼らは保育園が面する道路を実際に見て何とも思わなかったのでしょうか。

画像:千葉県市川市の保育園新設予定地(写真右側の空き地)

 保育園が面する道路は幅3メートルほどで、車がすれ違うことはまず無理と見て良いでしょう。

 約100名の児童が保育園に通う訳ですから、送り迎えによって人の往来が急激に増加します。このことによる交通問題を近隣住民が懸念することは自然なことであり、子供の声よりもこちらの方を深刻に捉えていると見るべきです。

 

 市川市の担当者は会見で、「近くの駐車場を借りる予定だった」と説明していますが、この説明では明らかに不十分です。「車で保育園に乗り付ける送り迎えをしないというルールを破る保護者が出てきた場合へのの対応」が全く考慮されていないからです。

 普段は(保育園側が契約した)駐車場に車を停め、子どもを送り迎えする親がほとんどでしょう。では、雨の日であっても、そのルールをきちんと守る保護者ばかりと言い切れるでしょうか。

 

 間違いなく、「雨の中、子どもを連れて行くのは可哀想」「駐車場が満杯だった」「別に渋滞が起きている訳ではないのだから問題ではない」と主張し、近隣住民を逆なでする保護者が出てくることが予想されます。

 こうなると、近隣住民への配慮不足が原因で保育園にクレームが殺到することになります。

 クレームの中には “言いがかり” に近いものもありますが、保育園側が対処しなければならないものも混在します。それを『クレーム受付専用窓口』を役所に設けるよう働きかけたり、訴訟を匂わせて恫喝しようとすると良好な関係は終わりを迎えることになるでしょう。

 

 市川市のケースでは次のような説明を行い、近隣住民に理解を求めるべきでした。

  1. 送迎用の駐車場を保育園側が借りる
    • 車での送り迎えは許可するが、保育園の前で児童を乗り降りさせる形態は許可しない
    • 例外事項は病気・事故などで車椅子や松葉杖の利用がある場合に限定する
  2. 車を利用した送り迎えのルールを破った保護者への罰則を設ける
    • 罰則の対象は車で送迎された児童の保護者とする
    • 半年間で2度の違反行為が確認された場合、当月末で当該児童は退園とする
    • また、通算3度目の違反行為に達した場合も、同様に当該児童は退園とする
  3. 近隣住民側から送迎ルール違反に関する問い合わせがあった場合、保育園側は違反状況については 速やかに調査・報告する義務を負う

 少なくとも上記のルールは住民側に対して、事前に提案しておくべきでした。車1台が通れるほどの道幅に面した場所に保育園を開設しようとするのですから、このぐらいの内容は想定しておかなければなりません。

 また、市内の既存保育園のケースを参考に、どのぐらいの交通量が増加するかの見通しを立て、住民に許容できる範囲であるかの意識調査をするなどしておくべきでした。

 保育園が開設することで懸念される問題に対する予防策や、対策を立てることを疎かにして「子どもは地域の宝」「子どもの声を聞けば元気になる」などと主張するだけであれば、“意識の高い系” と揶揄されることになるのです。

 

 “意識の高い系” と揶揄される人々は市川市の保育園開設中止問題で、こういった問題解決策を提示しているでしょうか。

 「子どもの声を騒音規制から外せ」というのであれば、公共交通機関から出る騒音も規制の対象外とすべきです。なぜ、子どもの声だけを特別視しなければならないのでしょう。

 騒音と感じる人々の意見を社会貢献という言葉で抑えつけようとする姿勢こそ、彼らの人権を無視した振る舞いではありませんか。お子様を使えば何でも許されるという驕りが透けて見えます。

 問題を口に出し、騒ぎ立てれば役所が何とかしてくれると勘違いしているように思われます。その姿勢は朝日新聞が「トイレを意図的に詰まらせろ」と書いた内容を実践していることと同じであり、世間から白い目で見られることを理解する必要があると言えるでしょう。