韓国総選挙:セヌリ党敗北で与野党逆転 パク・クネ政権は反日路線に舵を切るのか

 4月13日に韓国で国会(1院制)の総選挙が行われ、パク大統領の与党『セヌリ党』が第1党の座を失いました。

画像:2016年韓国総選挙の結果を受けた議席配分

 目標を過半数の議席獲得とハードルを下げていたのですが、第1党の座を死守できなかったことはパク大統領の残り任期が “レームダック” 状態となることを意味していると言えるでしょう。

 

 韓国議会は1院制の定数300です。選出方法ですが、小選挙区で253名、比例区で47名が選ばれる形が採用されています。

 今回の選挙ですが、与党『セヌリ党』が有利である状況でスタートしました。その理由は野党が『共に民主党』と『国民の党』に分裂し、ゴタゴタ劇が続いており、与党が200議席獲得することも現実にあり得るとハンギョレ新聞が今年2月に記事を書いている有様でした。

 左派色の強いハンギョレ新聞ですので、野党陣営に「しっかりしろ」と喝を入れる形で記事を書いたものと見ることもできます。しかし、実際にはそうなると都合の悪い韓国ならでは法律が存在するのです。

 

 日本の国会(2院制)では法案を審議する際、過半数の賛成で法案は成立します。また、参院で否決された場合でも衆院で3分の2以上の賛成で再可決が可能となっています。

 韓国は1院制ですので、再可決というプロセスはありません。

 その代わり、「与野党間で意見の食い違いがある法案を本会議に上程する場合、在籍議員5分の3以上が賛成しなければならない」という “国会先進化法” が2012年に規定されました。

 

 つまり、議員定数300の5分の3以上ですから、与党が法案を通すには180名の議員の賛成が不可欠なことを意味します。ですが、『セヌリ党』はそれだけの議員は抱えておらず、パク政権は発足当時からプチ・レームダックでした。

 大臣の指名がほとんど決まらず、ゴタゴタ感がメディアに報じられていた要因には、このような理由も存在していたのです。

 1院制の議会で過半数(151名)に近い賛成で強行採決されては困るという理由で作られた法律だったのですが、現状ではこれが足枷となり、“国会後進化法” と揶揄される存在になってしまっているのが実情です。

 

 韓国の歴代大統領は任期末にレームダック化しますと、反日活動を活発化させる傾向にあります。おそらく、パク大統領も同様の行動に出るという前提で日本側は準備をしておくことが求められます。

 ただ、パク大統領が反日活動を繰り広げたとしても、効果は限定的と言えるでしょう。

 なぜなら、就任当初から反日アクセルを全開にしていたからです。「1000年恨み続ける」だの「被害者と加害者の立場は変わらない」だの言い続けてきたのです。口に出したとしてさらなるインパクトはそれほど期待できません。

  

 野党が勢力を伸ばすことは対日融和路線にブレーキがかかると懸念している人もいるようですが、ハンギョレ新聞が4月8日に掲載した記事に目を通すべきです。

 与党のみならず第1、第2野党の総選挙政策公約集にも、この問題と関連した言及は全くない。 第20代国会議員選挙で慰安婦被害者問題が徹底的に敬遠されていると指摘される理由だ。韓国挺身隊問題対策協議会のユン・ミヒャン常任代表は「なぜ共に民主党と国民の党までが政策公約集で慰安婦問題に言及すらしないのか」とし「慰安婦問題を軽視している」と批判した。

 「日韓合意は無効にする」と鼻息が荒かった有力野党2政党すら、政策にはまったく記載のない状態なのです。票につながると判断すれば記載していたはずですが、言及すらないことはどういったプライオリティなのかを考えて見る必要があると言えるでしょう。

 

 ちなみに『セヌリ党』と『共に民主党』の差はわずかに1議席。無所属議員が11名当選している訳ですから、韓流ドラマのような権力闘争劇がこれから繰り広げられることでしょう。

 場外戦で『セヌリ党』が第1党の座を奪取するかもしれません。