「まず正社員化を進めよ」と主張する東京新聞こそ、まず実践せよ

 東京新聞は4月15日付けの社説で「同一賃金の議論 まず正社員化を進めよ」との見出しを掲げ、まずは非正規労働者の正社員化に取り組むべきと訴えています。

 “先ず隗より始めよ” という言葉がある訳ですから、東京新聞やその親会社である中日新聞が自分たちが雇用する非正規労働者の正社員化を始めなければなりません。

 

 政府は「同一労働同一賃金」の実現を、一億総活躍プランに盛り込む方針だ。しかし、本当に非正規労働者の待遇底上げにつながるのか。まずは、非正規の正社員化に取り組むべきではないか。

 (中略)

 そもそも、政府・与党は「同一労働同一賃金」を本気でやろうとしているのか疑わしい。というのも昨夏、労働者派遣法改正案の審議で、野党が提出していた「同一労働同一賃金推進法案」を、維新の党との修正協議で、骨抜きにした過去があるからだ。

 野党は格差是正を訴えており、政府・与党には選挙での争点化を封じる狙いがあるとみられる。もし選挙向けだけの話なら働く者をこれほどばかにすることはない。

 

 格差是正を訴えるのであれば、アルバイトが担うことが多い新聞配達をすべて正社員化することから始めなければなりません。その上で、給与水準についても高給を得ている記者たちの同水準にまで引き上げる責務があります。

 それをしなければ、単なる偽善者らによるキレイゴトで終わるでしょう。

 リベラル派を名乗る勢力は自分たちが受けている恩恵を返上し、既存の格差を是正することにはひどく消極的です。なぜ、正社員の記者たちだけが特権的な待遇を現在でも享受することが許されているのでしょうか。

 

 「取材を行う記者と新聞を届ける配達員の仕事内容は同一ではない」という意見もありますし、それによって賃金に差が生じることが自然なことと考える人もいると思います。

 しかし、新聞社が常日頃から「(給与水準が低く、非正規労働者の割合が大きい)配達員を正社員化し、給与水準を(社内でも高額である)記者と同じにすべき」と他業種の企業に強く訴えているのです。

 工場で勤務する正社員は工場での労働と並行して、現場を学び、将来は工場長などマネジメント側としての訓練もアサインされています。ただし、本人にその自覚がないケースも多く、外から見ただけでは非正規労働者と同じ業務をこなしているだけに思われるだけ不満が発生する要因になっていることは否定できません。

 他業種のマネジメント方法に東京新聞などのメディアはわざわざ口出しを行う訳ですから、非正規労働者を正社員化することによる経営メリットを示す必要があると言えるでしょう。

 

 もし、自分たちは非正規労働者をこき使い、他社に対しては正社員化を訴えるのであれば、完全なる偽善者です。

 “正社員化をしたことによる経営メリット” を示すことができるなら、それこそ自社の主張内容が正しかったことが証明され、他の企業のお手本となることができます。なぜ、そういった形に経営の舵を切らないのでしょうか。

 「新聞社は正社員化に舵を切らないのではなく、切れないのだ」と見透かされる前に自らアクションを起こすべきではないでしょうか。