安倍政権の激甚災害指定が遅い? どういった法律で運用されてるか知ってる?

 東京新聞の佐藤圭氏がツイッターで次のような発言をしています。

画像:佐藤氏(東京新聞)のツイート

 佐藤氏は新聞記者とプロフィールに記載していますが、激甚災害に指定されるとどういった恩恵を受けることになるかを知らないのでしょう。報道関係者であるなら、自ら調査すべきですが、その能力すら持ち合わせていないのでしょうか。

 

 激甚災害指定には『本激』と『局激』の2種類があり、基本的には災害復旧事業費の国庫補助に対して、補助率のかさ上げが行われるための制度です。

 『本激』と『局激』は指定されると、どちらも激甚災害法に基づく特例措置を受けることとなります。措置の内容に違いはありませんが、『局激』の場合は対象区域(市町村)を明示するため “局地激甚災害” として運用されます。

 

Q. 激甚災害の指定を受けるとどうなるの?

 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(負担法)と農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(暫定法)における災害補助事業費の国庫補助率がかさ上げされます。

Q. 激甚災害指定に要する時間は?

 激甚災害の指定には基本的に発生から1〜2ヶ月を要します。

 ただ、公共土木施設等や農地等については年度末に一括して指定されています。これは公共土木施設等関係の特別の財政援助や農地等関係の補助の特例に係る補助率は年度末に確定するため、局地激甚災害指定が年度末になっても実態上支障はないことが要因です。

Q. 主な激甚災害指定による特例はどのようなものですか?

 激甚災害法に基づき、主に以下のような特例措置が採用されることが予想されます。

  • 公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助(第2章)
  • 農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置(第5条)
  • 中小企業信用保険法による災害関係保証の特例(第12条)
  • 小災害債に係る元利償還金の基準財政需要額への算入等(第24条)

 

 要するに、安倍政権には激甚災害指定を早期に行う理由はないのです。指定されると、災害補助事業費での国庫補助率を高くなりますが、国からの補助金が即日交付される訳ではありません。

 “前借り” することは可能ですが、年度内に支給される災害復旧事業の事業費に占める国庫補助の金額内なら認められるという例外的なものです。

 では、東日本大震災で当時の菅政権(民主党)が震災翌日に激甚災害指定を行った理由は何なのか。それは次のような理由があったからです。

  • 震災発生が3月11日で、平成23年度予算に向けた補助率が確定済み
  • 3月末までに認定しないと、特例措置の適用が平成24年度予算からになる

 仮に安倍政権が激甚災害指定を行っていても、その恩恵を被災者が受けるようになるのは来年度予算を被災自治体などが利用した時期以降になります。

 「災害からの復興に利用する予算をどれだけの割合で国が負担するか」ということを決定することが現時点での最優先事項と言えるでしょうか。行方不明者の捜索や、避難所への必要物資を届ける輸送体制を整える方を重視すべきなのではないでしょうか。