三菱自による燃費値偽装による影響は国内だけに限定されるだろう

 三菱自動車工業が試験時に測定した走行抵抗の値を意図的に別の車種で計測された小さい値に入れ替えていた不正が明るみに出たことで窮地に立たされています。

 “リコール隠し” が1枚目のイエローカードであったと考えると、今回の不正は2枚目のイエローカードを提示されるに値する問題であり、市場からレッドカード(=退場処分)を突きつけられたとしても言い訳できないでしょう。

 ただ、大きな影響を受けるのは日本国内だけに限定される可能性があります。

 

 まず、今回の不正が発覚したのは “日本独自の規格である軽自動車” というカテゴリです。

 日本は国土の狭い島国で、道幅や路肩にゆとりが少ないため、普通車の中でもコンパクトな車種が求められる市場です。その上、エネルギー資源を輸入に頼っており、燃費を重要視する市場ニーズがあると言えるでしょう。

 燃費という部分で不正があったのですから、三菱自動車に対する日本国内での信用はガタ落ちで窮地に立たされたとしても不思議ではありません。

 実際には「エコカー減税の対象外であったにもかかわらず、減税の恩恵を受けていた」のですから、追徴金を科されることになるでしょう。それが経営を圧迫する要因になることは目に見えています。

 

 しかし、海外市場でネガティブなイメージが広まるかは別問題です。日本国内では販売不振に悩む三菱自動車ですが、主力市場は日本国外にあります。

画像:三菱自動車の販売台数(2015年見込み値)

 三菱自動車にとっての日本市場は、販売台数では全世界の 10% 程度。営業損益ではプラスマイナスゼロが2015年度の見通しです。

 このことから、日本国内市場を担当する役員から「収益アップ」を日頃から厳命されていたのでしょう。“リコール問題” での影響を払拭しようとして、越えてはいけない一線を越えてしまったことがきっかけになったものと思われます。

 

 では、肝心の三菱自動車が海外市場で強い理由はどこにあるのかと言いますと、パリダカで三菱自動車のパジェロが結果を残しているからに他なりません。

 海外の道路事情は路面状態の良い道路が張り巡らされ、ガソリンスタンドも数多く存在する日本とはかけ離れている国や地域が多く存在します。そのようなエリアでは “過酷な環境のレースで、毎年結果を出す車” への評価やブランドイメージは非常にポジティブなものです。

 悪路に強く、致命的なエンジントラブルも起きず、ギアボックスの交換も簡単にできる。また、勝てる燃費性能も持っていることもレースで証明されているのですから、コアなファンが離れることはないでしょう。

 

 むしろ、「ディーゼル車の排ガス浄化機能の設定を不適切に低下させていた」とドイツ運輸省から名指しされたメーカーの方が世界的には痛手を負う可能性があります。

 

  • フォルクスワーゲン
  • ポルシェ(VWの完全子会社)
  • アウディ(VW傘下)
  • ダイムラー
  • オペル(GM傘下)

 ディーゼル車は “エンジンを痛める恐れのある場合は排ガス浄化機能を低下させて良い” という規定があります。この規定はメーカー側が都合よく拡大解釈できる余地があるため、批判が収まらない原因にもなっているのです。

 

 その点、三菱自動車は “走行抵抗の値” を不正に入れ替えていたのですから、空力面を重要視することで燃費値を向上させる余地は残されていると言えるでしょう。ただ、顧客からの信頼度は間違いなくマイナスに転落したため、簡単な道のりではありません。

 社内に蔓延する空気を読まない人物を外部から招聘し、企業文化として根付いた悪習慣を根絶しない限り、復活を遂げることはないと言えるのではないでしょうか。