“立憲主義” を主張する勢力こそ、活断層と解釈して志賀原発1号機の廃炉を迫る者たちを批判せよ

 反原発派の立場で記事を書く朝日新聞は原子力規制委員会に対し、有識者会合が「志賀原発の敷地内にある断層を活断層と解釈が合理的」を報告したことを好意的に報じ、廃炉を迫られることになると伝えています。

 しかし、この主張は “立憲主義” を掲げるのであれば、真逆の内容であることを理解しなければなりません。なぜなら、法律的な意味合いを全く持たないからです。

 

 まず、法治国家では『法の不遡及』が原則となっています。これは実行時に適法であった行為を、事後に制定した法令などを根拠に過去に遡って処罰することを禁止するという原則です。

 志賀原発の経緯を時系列で確認すると次のようになります。

 

表1:『志賀原発』と『活断層の定義』の変遷
事象
1967年  原子力発電所の建設計画を発表
1978年  耐震審査指針で『活断層は過去5万年以内に活動した断層』と定義
1988年  8月に原子炉設置許可、12月に着工開始
1993年  1号機の営業運転開始
1997年  2号機の計画が承認される
1999年  8月に2号機の工事計画許可、同日に着工開始
2006年  2号機の営業運転開始
2010年  重要施設が活断層の上に建てることを想定しないと明記。活断層の定義は『後期更新世(=約12万年前)以降の活動が否定できないもの』に変更
2011年  東日本大震災発生
2012年  新適用基準で活断層の定義を『40万年以内の活動が疑われるもの』にまで拡大
2016年  新適用基準により、「志賀原発の敷地内に存在する断層は活断層であると考えるのが合理的」と述べ、廃炉を要求

 

 原子力規制委員会が審査することは「新たに原子炉設置を行う時」であり、既存施設についての審査ではありません。

 志賀原発(1号機)は1993年に営業運転を開始させており、設置許可は1988年時点に取得済みです。同様に2号機も1999年に審査を経て、2006年に運転を開始しています。

 これを東日本大震災後にできた2012年の新適用基準で運転停止にすることは、明らかに『法の不遡及』に該当します。

 例えば、2014年4月1日から消費税は 8% に上昇しましたが、国税局から「19XX年の納税額が消費税 8% 分になっていないから、追徴課税分を速やかに納付しなさい」という通達を受けた人はいないでしょう。しかし、この “ありえない通達” を「原子力発電所にだけ課すべきだ」と訴える人々が存在するのです。

 

 “立憲主義” を主張する人々は電力会社が『法の不遡及』を無視した振る舞いによって損害を被る可能性が出ていることに沈黙を貫いたままなのでしょうか。もし、自分たちの政治・思想とは異なる考えを持つ電力会社だから黙認するとなると、“立憲主義” の掛け声は単なるパフォーマンスと断罪されるべき対象です。

 「消防法は遡及的に適用される」と反論する人もいるでしょうが、これは火災の発生確率が地震などの他の災害と比べて極端に高いことが理由になります。

 地震が起きた場合のことを考えるのであれば、発生確率を考慮に入れなければなりません。40万年前から1度動いたかもしれないという理由だけで3000億円規模の損失を電力会社に負わせようとするなら、損害賠償を誰かが負わなければなりません。

 朝日新聞などの反原発派が損害分を負担するのでしょうか。関西電力が差し止めの仮処分による損害賠償を原告に要求すると伝えると、「恫喝だ」と批判するだけの反原発界隈は負担せずに逃げることが関の山でしょう。

 反原発派の活動家らの “心の平穏のため” に、多くの人々が高額な電気料金の支払いを余儀なくされる状況は絶対にお断りしたいものです。