電力小売り全面自由化の勝者である都市ガス会社が抱える問題

 時事通信』によりますと、2016年4月から始まった電力小売り自由化で、いわゆる既存電力からの切り替えは 1.2% に留まっているとのことです。

 自前で発電所を持つ東京ガスなどは順調に契約数を伸ばしていますが、唯一の勝者と見られる都市ガス会社には記事で言及されていない問題があります。

 

 家庭向けを含む電力小売りの全面自由化から、5月1日で1カ月を迎える。今月22日時点で、新規参入の電力会社などに電気購入先を切り替え申請した件数は74万4400件だった。全国の一般家庭向け契約数(約6260万件)の1.2%にとどまっている。

 (中略)

 勝敗のカギは顧客の電気料金への要望に対応できるかどうかだ。自前の発電所を持ち、割安な価格で電力を安定供給できる東京ガスやJXエネルギーは既に多くの顧客を獲得している。だが販売促進活動などに見合ったもうけが得られない可能性があり、低価格競争はもろ刃の剣でもある。

 

 電力自由化による切り替えがそれほど起きていない理由は 電力料金そのものが割安にならないから です。

 ガス会社と契約するにせよ、大手通信会社と契約するにせよ、鉄道会社と契約するにせよ、電力小売新会社の親会社が提供する商品とセット契約しない限り、電気料金が割安にはならないのです。この状況では既存の電力会社から乗り換えようと考える人は限られるでしょう。

 現状では新電力会社が供給力を上回る需要ニーズが生じた場合、既存電力会社が差額分を発電する決まりになっています。

 これは新電力の “尻拭い” を既存電力会社が行う状況であり、自由化とは相反することだと指摘する声が出てくると思われます。少なくとも、新電力会社はデポジットという形で既存電力会社に差額分の発電料金を事前に支払わせるルールを明確化しておく必要があるでしょう。

 

 時事通信の記事では東京ガスやJXエネルギーといった自前の発電所を持つ新電力会社が順調なスタート切ったと高評価しています。

 ですが、これらの会社が抱える問題に気づいていないのでしょう。

 実は2017年4月から都市ガス小売自由化が始まります。つまり、電力小売自由化と同じことが1年後に都市ガスでも起きるのです。

 東京ガスなど都市ガス会社は小売り部門での独占を認められてきました。この市場に(ガス会社以上にガスを火力発電用途で)大量に購入している電力会社が殴り込みをかけてくるのです。電力自由化で “オイシイ思い” をしたガス会社に報復する機会を虎視眈々と狙っていることでしょう。

 ガス会社が順調に顧客を増やせるのはこの1年だけに限定されることが現実なのではないでしょうか。