最低賃金引き上げを訴える前に、年功序列による正社員間の格差を是正せよ

 5月1日がメーデーということもあり、労働団体が各地で集会を行っていることが NHK などメディアで報じられています。

 労働者の権利を訴えるための活動としてスタートしたのですが、組織としてはジリ貧状態となったいます。その根本原因から目を背ける限り、衰退を避ける方法はないと言えるでしょう。

 

 東京・渋谷区の代々木公園で開かれた全労連の中央メーデーには、全労連の発表でおよそ3万人が参加しました。

 (中略)

 集会では、春闘での大幅な賃上げや最低賃金の引き上げのほか、解雇の金銭解決などの労働法制の見直しに反対することなどを盛り込んだメーデー宣言を採択しました。

 

 「労働者が働きやすい環境を作り、維持する」という目標はすばらしいものです。優秀な人材を流出することは経営者にとっても痛手であり、そのことに留意した人がほとんどでしょう。

 ただ、私欲を肥やすことに走る経営者がいることも事実であることと同様に、労働組合もまた、自らの私欲を肥やす方にばかり注力する組織が存在することを見落としてはなりません。

 労働組合は「組合員の高齢化」が問題として指摘されています。特に、若い世代での組合員の組織率が数値として下がっていることが原因の1つなのですが、組合離れを引き起こしている要因から目を背け続けていることは致命的と言えるでしょう。

 

 定年に近い世代の正社員は “年功序列による恩恵” を受けた最後の世代でもあり、若い正社員と比較すると、同一労働・同一賃金とはかけ離れた給与形態となっています。

 『同一労働・同一賃金』を求めておきながら、組合内で生じている格差を放置したままの労働組合が主張する内容に賛同する若い世代が多数派を占めることはないでしょう。労働組合が抱える矛盾点を見抜いている、もしくは勘付いているから組合とは距離を保っているのです。

 手作業で全行程をカバーする業務形態であれば、年功序列は非常に有効な制度です。ですが、現代では機械化が進み、IT技術を活用している場合が大半です。“職人” が決め手となる業種以外では経験年数による差は生まれにくくなっていることを認識しなければなりません。

 同じ仕事をアサインされているにもかかわらず、給与が倍近く異なるという正社員内で生じている格差への不満をそらすために、非正規労働者の雇用改善を訴えることは明らかな欺瞞と言えるでしょう。

 

 フェアな賃金体系を構築するには『仕事の成果に対する報酬』という定義が欠かせません。ですが、労働組合は『勤続年数という成果に対する報酬』を未だに求めているのです。

 新しい技術が誕生し、ニーズも移り変わる市場で結果を出すことが求められる状況下で、雇用された数十年前の水準から仕事面で進歩がなくても勤めてさえいれば年収が上がるという雇用形態を維持しようとする労働組合は果たして労働者のプラスになっているのでしょうか。

 年功序列制度にしがみつきたい組合員だけが熱心に活動し、他の労働者は「さっさと潰れてしまえ」と思うだけに留まるでしょう。格差是正を訴えるのであれば、自らの組合内で蔓延している格差から手をつけるべきなのではないでしょうか。