オーストリア・大統領選で左派候補が辛勝するも、火種は燻ったままに

 大接戦となっていたオーストリアの大統領選挙は与党『国民党』や『緑の党』が支援するファン・デア・ベレン候補が 50.3% の得票で、辛くも決選投票に勝利したとNHKが伝えています。

画像:ファン・デア・ベレン候補の勝利を伝えるNHK

 「リベラル」を自称するメディアはこぞって選挙結果を歓迎していますが、問題が先送りになっただけであるという現実を見ておく必要があると言えるでしょう。

 

 オーストリアの大統領は “名誉職” という立場のもので、政治の実権は首相にあります。これはドイツやイタリアで採用されている政治形態と同じものとなっています。

 今回の大統領選は1回目で決まらなかったため、決選投票にもつれ込むこととなりました。その際、(決選投票で涙を飲むこととなった)自由党のホーファー候補が2位となったファン・デア・ベレン候補を10ポイント以上引き離していたことを忘れてはなりません。

 逆転できた要因は「(政治的な妥協が不要である)名誉職の大統領を選ぶために、なりふり構わず選挙協力に走れたから」です。

 これが、政策の対立が如実に現れる総選挙となると、協定交渉が不調に終わり、共倒れになるシナリオも十分に考えられることを念頭に置いておく必要があります。その場合はリベラルメディアが忌み嫌う “極右政党の首相” が民意によって選ばれることになるでしょう。

 

 彼らが考える最悪の事態を避けるには、“極右政党” のエネルギー源となっている問題に正しく対処することが欠かせません。

 不満の火種が燻り続けている状態なのですから、そこに油をかけるような間違った政策を実施してしまうと手に負えなくなってしまうのです。自由党が掲げている政策は『オーストリア・ファースト』。このスローガンを正面から批判することが難しいことは容易に理解できるでしょう。

 

 どの国も自国の国益を最優先にすることは当然だからです。

 もし、A国が自国より他国Bを優先するのであれば、それは他国Bの植民地であることと同じです。植民地を持つことは現在では世界的に大バッシングを浴びることでしょう。ですが、自発的に植民地のように振舞ってくれる国があるなら、オイシイ思いができるため、歓迎する国や地域は少なからず存在すると思われます。

 自分の国を他の国や地域の植民地となるようにしようとする勢力に批判の矛先が向かうことは当たり前です。それを「人道主義」やら、「人権」という言葉で誤魔化そうとする姿勢が見透かされているのです。

 

 ヨーロッパでは “難民問題” へのマズい対応が、EUの屋台骨を大きく揺さぶりました。

 自分たちが納めた税金による公的支援の対象が自国民ではなく、自称・難民へと注ぎ込まれ、人道支援の名の下にさらに手当が厚くなる様相を呈しているのですから、怒りを溜め込まない方がおかしなことです。

 「オーストリア・ファーストという考え方は私達も同じであり、そのための政策を実行することを約束する。ただ、救いの手を差し伸べる必要のある人々に対しては国籍に関係なく支援するつもりだ」

 このような発言をリベラル派が宣言し、実際の行動に移さない限り、“極右政党” が進捗することを止めることは不可能だと思われます。

 

 「困っている人(=自称・難民)を助ける」という理由で、有権者が納めた税金を彼らために使っている政治姿勢に批判が集まっているのです。

 “リベラル” が自分で調達した資金を難民支援に使うことは自由ですし、誰も不平・不満を言わないでしょう。しかし、人道支援を理由に政府予算を使うことは反発を招き、「他人の褌で相撲を取っている」と忌み嫌われる理由になります。

 大きな問題を先延ばししたことによって、時間が解決してくれるようなことはまずありません。誰かが解決策を作成し、実行しなければならないのです。

 オーストリアの現政権にそれだけの政治家としての能力があるのかが問われている問題だと言えるのではないでしょうか。