ヒラリー・クリントンが抱える3つのスキャンダル

 次期アメリカ大統領の本命候補であるヒラリー・クリントン氏にはスキャンダルが燻り続けている状態です。

 対立候補であるドナルド・トランプ氏の暴言とはレベルが異なっているだけに、対処を間違うと大統領選で敗退することになる可能性がある内容のものばかりと言えるでしょう。

 

1:メール・スキャンダル

 1つ目はヒラリー・クリントン氏が国務長官の地位にあった 2009 年から 2013 年の間に個人的なメールアドレスを公務で使用していたという問題です。

 当時は wikileaks (ウィキリークス)が猛威を振るっており、政府の公式アドレスが信用できなかったという事情はあるでしょう。しかし、規定を作る側の政治家が自ら規則を破る姿勢は決して評価できるものではありません。

 ヒラリー氏は「メールはすべて保存していた」と主張していましたが、“公文書” に該当する公務中のメールのやりとりを一部とはいえ、国務省に引き渡さなかったことは大きなマイナスとなります。

 “裏” があると感じさせる人物を「世界最高の権力者」にしても良いと考える有権者はいないでしょう。少なくとも、ネガティブなイメージを払拭することがヒラリー氏には求められているのです。

 

2:ベンガジ・スキャンダル

 2つ目の火種は “ベンガジ・スキャンダル” と呼ばれるものです。

 2012年9月11日にリビア東部ベンガジにあったアメリカ大使館がイスラム過激派のテロリストに襲撃され、4名が死亡する事件が発生しました。外交下手であるオバマ政権が犯した失態の1つと言えます。

 

  • “アラブの春” に対する評価を見誤った
  • 大統領選で「アルカイダの脅威は薄れている」と主張
  • 事件の発生原因をネット動画に責任転嫁
  • 事件解明に非協力的な姿勢
    → 責任転嫁の疑惑メールが公開されたのは2013年
    → クリントン氏への公聴会が行われたのは2015年

 「クリントン氏は公聴会を上手く乗り切った」と高く評価する支持者もいるでしょう。しかし、外交手腕が非常に不安であることは間違いありません。

 地域情勢の分析を見誤り、対応が後手に回りました。「アルカイダの脅威は薄れている」と大統領選挙で発言した以上、(発言内容と矛盾することになる)警備を増強することはできません。この段階で判断的には問題があったと見ることができます。

 その上、事件が発生した後の対処も問題があったと言わなければなりません。ましてや、事件の責任を転嫁しようとしたことは隠蔽体質が政権内に根付いていると見られる要素になるからです。

 

3:クリントン財団・スキャンダル

 最後の3つ目はクリントン財団が関係する問題です。

 「クリントン財団」はクリントン家の慈善団体です。慈善団体には様々な人々から寄付が行われるのですが、寄付ではなく、便宜を図ってもらった “お礼” として支払われたと思われる資金の流れが存在することが浮上したためです。

 その中で最も大きく問題視されているのはイアン・テルファー氏の一族が運営する慈善財団からクリントン財団が資金を受け取っていたことです。

 テルファー氏はウラニウム・ワン社(カナダ)の会長を勤めていたのですが、この間にロサトム社(ロシア)の傘下企業に6億1000万ドルで自社株式の 51% を売却しています。通常の商取引であれば、アメリカが関係することはありません。

 しかし、ウラニウム・ワン社は名前が示すようにウランの原料であるウラニウムを扱うビジネスをしていること、アメリカ・ワイオミング州に30万エーカーにも及ぶ鉱山を保有していたため、売却に対してアメリカ政府委員会の承認が不可欠だったのです。

 その委員会メンバーには国務省が含まれており、ヒラリー・クリントン氏は当時の国務省長官という立場だったのです。「便宜を図ったのではないか」と見られるだけの状況証拠はあると言えるでしょう。また、(クリントン国務長官の国務省に)ロビー活動を行っていた60社以上が総額で 2600 万ドル以上をクリントン財団に寄付していたと WSJ は報じているのです。

 

 既存の大手メディアが「アンチ・トランプ」と掲げたキャンペーンを行う自由はあります。しかし、ヒラリー・クリントン氏に存在する数々の疑惑を放置しておいて良い理由にはなりません。

 いずれのスキャンダルも “エスタブリッシュ層” ならではの問題ばかりです。

 権力を持っていれば、不正を行える状況にあり、疑惑も追求されずに済むという間違ったメッセージをメディアが送るほど、トランプ氏の勢いが止むことはないでしょう。

 直接的にそういったメッセージを送るメディアはありませんが、「ヒラリー氏を擁護する=エスタブリッシュを肯定する」ということになっていることを自覚する必要はあると言えるのではないでしょうか。