イギリスのEU残留か脱退かの争点は「経済への悪影響」か「移民からの悪影響」の選択
イギリスでは6月23日(木)に「EU(欧州連合)残留か離脱か」を問う国民投票が行われます。
一時は残留派が優勢な情勢となったのですが、ここに来て離脱派が勢いを取り戻し、拮抗した状態で投票日を迎えそうだと時事通信が報じています。
23日に実施される英国の欧州連合(EU)残留か離脱かを問う国民投票で、いったん優位に立ったかに見えた残留派に対し、離脱派は移民問題をてこに反撃し、先週は離脱派優勢の世論調査結果が相次いだ。両者の勢いは拮抗(きっこう)したまま終盤戦にもつれ込む情勢となっている。
残留派は「EUを離脱すると、経済が停滞する」ということを前面に押し出すキャンペーンを展開しました。
これはEU加盟国間での取引には関税など国際貿易の際に存在する “障壁” がありません。仮にEUから脱退すれば、この障壁が復活するのですから、これはイギリス企業が持っているEU内での競争力を削減させることを意味します。
当然、イギリス企業の経営が傾くようなことがあれば、そこで雇用されているイギリス人の生活を直撃します。そのため、離脱するデメリットを懸念する有権者が『EU残留』を支持していたと見ることができます。
ところが、直近では離脱派が勢いを取り戻す調査結果が軒並み出ていると報じられています。残留派が主張する内容のどこに問題があったと言うのでしょうか。
まず、1つ目ですが、EUに残留しても経済が上向かないということです。イギリスはEU加盟国ですから、EU加入によって受けられる恩恵はすでに享受しています。
したがって、残留は現状維持を選択することと同義ですから、メリットを新たに見出すことが難しいのです。しかし、それでは(世論調査でリードを持っている)残留派と離脱派が拮抗するようなことはありません。
風向きが変わったのは「EU加入によって被るデメリットを無視できなくなったから」でしょう。それはイギリスにやっている移民の存在です。
与党・保守党は公約で「移民を10万人以下に抑える」と約束しました。ところが、5月26日に統計局が発表した移民の純増数は33万3千人と公約の3倍以上だったことが明らかになったのです。
EUに留まり続ける限り、イギリスにやって来る移民・難民を拒む権限はないため、彼らによって引き起こされるマイナス面は無視できないものとなります。特に、社会保障制度へのタダ乗りや、単純労働などの職を奪うことが問題となっているのです。
EUに加入していることで得られる恩恵やメリットは実質的に “頭打ち” となっています。それに対し、デメリットにもなり得る「移民・難民の流入」は歯止めをかける術はない状態です。
移民や難民のためにイギリス人は働かなければならない。
このような事態が起きることが実際に考えられるのであれば、“NO” という意見が増えるのは自然と言えるでしょう。特に、公約で掲げられた数の3倍以上の移民が増えたのであれば尚更です。
イギリス人のために用意されているはずのセーフティーネットに(イギリスへの)移民や難民が乗っかっており、肝心のイギリス人が蔑ろにされている。このような現実が浮かび上がっているのですから、現状を黙認しようとすることの方が無茶なことなのです。
このようなフリーライダーに寄り添うほど、モラルが崩壊し、国力が衰退する要因となるでしょう。イギリス政府の歯止め策が効果を発揮していない状況なのですから、EU離脱という選択を有権者がしたとしても驚きではないと思われます。