民進党は参院選の公約「国民の知る権利と報道の自由を保障します」を守れ!

 民進党は参議院選挙に向けた国民との約束で「国民の自由と人権を守る」とあります。

 その中で「国民の知る権利と報道の自由を保証する」と記載しているのですが、東京電力の第三者検証委員会が発表した内容に対し、選挙妨害の疑いがあると法的措置を匂わせています。この行為こそ、報道の自由を損なうものではないでしょうか。

 

 東電の第三者検証委員会が報じた内容は福島第一原発での事故に対する民主党政権(当時)が意図的に情報を隠蔽した疑いがあるというものでした。NHKは次のように報じています。

 東京電力が福島第一原子力発電所の事故のあと、2か月以上、メルトダウン、いわゆる炉心溶融が起きたことを認めなかったことについて、原因などを調べてきた外部の弁護士らで作る委員会は、当時の清水正孝社長が官邸からの指示で炉心溶融ということばを使わないよう指示していたなどとする検証結果をまとめました。

 

 官邸から「この言葉(=炉心溶融・メルトダウン)を使うな」という指示があったことは映像にも記録されているため、指示の存在を否定することはできないでしょう。

画像:官邸からの指示が伝えられた瞬間

 もし、「そのような指示はしていない」と民進党が主張しようものなら、明らかな “嘘つき” となります。それに、政権与党として行った事故対応の責任は民進党(当時の民主党)にあるのです。

 したがって、事故対応はいつでも何度でも検証されて良いものですし、きちんと対応していたのであれば、そのことを堂々と主張し、政党として政権担当能力があることを国民に向けてアピールすれば良いだけのことです。

 

 しかし、民進党の対応は読売新聞に報じられたように、選挙妨害という理由で法的措置を含めた対応を検討するというものでした。

 民進党の枝野幹事長は17日、国会内で記者会見し、東京電力の第三者検証委員会が公表した東電福島第一原子力発電所事故に関する報告書について、「民進党の信用を毀損する。参院選前に不誠実な調査結果を公表するのは選挙妨害の疑いも免れない」と述べ、法的措置を含めて対応を検討する意向を明らかにした。

 この反応は最悪に近いものと言えるでしょう。なぜなら、「選挙のことしか念頭にない」と自供していることと同じだからです。また、公約にある “報道の自由” を自ら否定していることも問題視されるでしょう。

 では、どのように対応すべきだったのでしょうか。

 

 まず、論点は「事故の処理」に位置づけることがポイントとなります。評価される対象は「原発事故が発生した後の対応全体」なのですから、その一部だけで評価されるものではないということです。

 次に「メルトダウン」という言葉の定義を明確にすることでしょう。専門的に研究している原子力学会でさえ、メルトダウンという言葉に対する定義が存在しないのです。

 定義がない言葉を対応を行っている当事者が安易に発言することを自重するよう指示することは当然です。また、現場の様子が確認できていない状況であったにもかかわらず、憶測で断言することに直結する発言を控えることも同様です。

 憶測でストーリーを述べて損害を被るリスクを持っていないのはメディアぐらいでしょう。「原子炉自体が破壊された」という話を持ち出そうとしていた当時の報道体制も同じように検証する必要があるのではないでしょうか。

 

 福島第一原発の事故に対し、所有者である東京電力は責任を問われていますが、当時の政権であった民主党(現・民進党)やメディアの対応についても責任を問われるべきです。

 「東電が悪い」と東京電力だけにすべての責任を押し付けることは明らかに無責任です。“責任” への近くのないメディアや民進党への世間からの信頼がなくなって当然でしょう。彼らが「再び政権交代を」と主張し、メディアがそれを後押ししたとしても支持は広がらないと思われます。

 報道の自由が損なわれていると主張するリベラル派は今回の件に対する民進党の対応を厳しく批判することでしょう。もし、そうした行為を行わないのであれば、自分たちの活動が「報道の自由を問題視しているのではなく、単に安倍政権を批判したいだけだから」ということを主張していることと同じだからです。

 政権批判さえできれば問題ないと考えるのはあまりに安易な発想であると認識しておくべきと言えるのではないでしょうか。