赤字に転落した三陽商会、バーバリーのブランド頼りだったことが浮き彫りに

 日本国内で「バーバリー」と販売権を保有していた三陽商会が、ライセンス契約が切れたことにより、販売不振に陥り赤字に転落すると朝日新聞が報じています。

 バーバリーの持つ “ブランド” の強さがどれほどであったのかが示されたニュースと言えるでしょう。

 

 英ブランド「バーバリー」の国内ライセンス契約が切れたアパレル大手の三陽商会は24日、2016年6月中間期の純損益見通しを下方修正した。従来のゼロから15億円の赤字に転落する。稼ぎ頭だったバーバリーの後継ブランドが育たず、暖冬による販売不振も重なった。

 

 バーバリーとのライセンス契約を結んでいた三陽商会ですが、その内容はかなり三陽商会側が有利なものでした。純正品の独占販売権に加え、「バーバリー・ブラックレーベル」「バーバリー・ブルーレーベル」という日本独自の廉価版販売も可能で、ライセンス率も低く抑えられていたのです。

 ところが、“ファストファッション” が世界的な広まりを見せると、三陽商会の経営手法はバーバリー本社から睨まれることになります。

 ハイブランドに属するブランド名を使って自由に廉価版製品を販売されると、ブランド価値を損なうとの懸念が生まれたからです。また、ネット社会の発展でブランド展開を行う際に現地企業と組む必要性が少なくなりました。

 

 バーバリーとしては自社のブランド名が市場に浸透した段階で、現地企業の方が取り分の多いライセンス契約を継続する理由は消滅します。「売上やブランドイメージを考慮し、適切な店舗のみを直営店とする」ことが企業経営での最適化なのですから、バーバリー側の動きに間違ったものはなかったと言えるでしょう。

 一方の三陽商会ですが、“バーバリーが抜けた穴” は予想以上に大きいものでした。

 「ブラックレーベルやブルーレーベルがあるから、落ち込みは限定的」との観測も一部ではありましたが、マッキントッシュ・ロンドンをバーバリーの後継ブランドに据える決断をしました。

 この判断は「ブラックレーベル、ブルーレーベルともに購買理由はバーバリーの名前が付いているから」と分析したためだと思われます。この分析が正しかったということは三陽商会が赤字に転落した現実が示しています。

 

 企業が “ブランド” の扱いにナーバスになのはそれが生命線であり、命綱であるケースがあるからです。

 バーバリーのブランドという命綱が使えなくなった三陽商会は赤字へと転落しました。這い上がるには新しいブランドを見つけ、日本市場に浸透させるか、自ら作り上げるしかありません。ただ、“ブランド” を活かすことに比重を置いた経営を続けてきたため、人材的にも偏りが生じていると思われます。

 そのため、経営方針の転換を行うことも容易ではないことは明らかです。強みを失った企業は “新たな強み” を確立させるまで苦労することは自然なことと言えるのではないでしょうか。