移民政策を推進するなら、不法滞在者に厳しく対処するのは必要不可欠
在留資格を持たないタイ人の男子高校生が強制退去処分の取り消しを求めた裁判で、東京地裁は訴えを退ける判決を下したとNHKが伝えています。
移民政策を推進するには、この男子生徒のような在留資格を持たない不法滞在者に国外退去処分を下し、実行するのは必要不可欠なことです。
日本で生まれ、甲府市の高校に通っているタイ人の男子生徒が、母親とともに受けた強制退去処分の取り消しを求めた裁判で、東京地方裁判所は、暮らしたことのないタイに送還されると生活が困難になると認めた一方、「日本で養育できる人がいない」として、訴えを退ける判決を言い渡しました。
6月30日に東京地裁の岩井伸晃裁判長から下された判決とその理由は次のようなものでした。
- ウォン・ウティナンの母親
- 日本に不法滞在
- タイに強制送還されても、生活に支障はない
- ウォン・ウティナン(16歳、高校2年生)
- 母親が不法滞在中に誕生
- 日本で生まれ育ったため、タイ語ができない
→ タイでの生活が困難になることは認められる - 母親の代わりとなる養育者が日本にいない
→ 訴えは却下
原告を支援する人々からすれば、納得できない判決だったでしょう。しかし、判決はかなり原告の事情に配慮した内容となっています。
まず、不法滞在をしていた母親には強制退去処分を下す必要があります。「ウォン・ウティナン氏の世話をする」という理由で日本滞在が認められるのであれば、不法滞在者であっても、“アンカーベイビー” による合法滞在者という法的根拠を与えることになるからです。
アメリカでは合法に入国した妊婦がアメリカ国内で子供を出産し、生まれたアメリカ国籍を持つ赤ちゃんを根拠にアメリカの滞在資格を得る “アンカーベイビー” が社会問題となっています。
ところが、ウォン・ウティナン氏のケースでは「日本に在留する資格のない母親」と「彼女が日本で出産した子供(=ウォン・ウティナン氏)」に滞在許可を与えるべきとの訴えを起こしているのです。
いつから、日本は完全出生地主義の国になったのでしょうか。
日本で移民政策を推進し、経済力を高めたいのであれば、移民に対するルールを整備し、厳格に運用しなければなりません。「日本に来て欲しい」と思うような人材を欲しがるのは日本だけではないのです。
そうした人々は複数の国が提示している移民に対する受け入れ条件を吟味し、その国が実際に運用しているルールを確認した上で、どの国に行くのかを決める余裕があるのです。
不法滞在者の数が多いことは外国人がトラブルを起こしている可能性が高く、自らも外国人というカテゴリに属する移民希望者が躊躇する大きな要因となるでしょう。
ルールを守らない外国人を国内から強制退去させ、自国民に外国人の誤った印象が広まるのを防ぐことも現地当局が担わなければならない大切な役割なのです。
さて、ウォン・ウティナン氏自身は東京地裁の判決を見ても、日本に滞在できる可能性が完全に潰えた訳ではありません。
滞在が認められない根拠は「養育できる人がいない」というものですから、在留を支援する人たちが責任を持って彼を支えることを証明できれば東京高裁で逆転勝訴も可能と言えるでしょう。
「日本は母国でタイに居場所はありません。支えてくれる人や友だちがたくさんいる日本にいさせてください」と本人は述べているのです。支えてくれる人や友達がウォン・ウティナン氏が自立するまでの間に必要となる学費や生活費の面倒を見れば良いのです。
仮に大学進学をするとして、学費+生活費で1000万円超の資金を支援者たちで用意し、支出には弁護士等の監査を付けることで「養育は可能である」と示してみる価値はあります。
ウォン・ウティナン氏の支援者が養育費を出そうとしないのであれば、その責務を日本政府に丸投げしていることと同じであり、単なる “フリーライダー” です。
貴重な予算にタダ乗りしているのですから、国外退去処分となって当然です。給付型奨学金の創設を訴えている政党もありますが、彼のように在留資格を持たない人物にも支給されるのであれば、それは間違いです。
なぜなら、日本で優先されるべきは日本国籍保有者だからです。不法滞在者が日本で生活するための便宜が図られ、国の予算まで費やされるようなことほど、馬鹿げたことはないと言えるのではないでしょうか。