“第2の慰安婦報道” と同じ構図で世に知られた「子宮頸がんワクチン問題」、行き着く先はイレッサ訴訟か

 多くのメディアが寄り添う形の報道姿勢を見せた「子宮頸がんワクチン」の問題が転機を迎えようとしています。

 患者らの弁護士が集団訴訟を6月27日に起こす方針を明らかにしたとNHKなど各メディアが報じていますが、報道内容が “慰安婦報道” と似通っており、イレッサ訴訟と同じ結末を辿る運命であるように思われます。

 

 子宮頸がんワクチンを接種したあと原因不明の体の痛みなどを訴える人が相次いだ問題で患者らの弁護団が会見し、今月27日に東京や大阪など全国4か所で国と製薬会社に対し集団訴訟を起こす方針を明らかにしました。

 (中略)

 原告は15歳から22歳までの女性合わせて64人で、国と製薬会社はワクチンの安全性や有効性について適切な情報を示さないまま公費助成の対象にしたり、定期接種にしたりして接種を勧めた、などと主張する方針だということです。

 

 メディアで注目された子宮頸がんは日本での年間患者が約1万人(2008年)、死者は年間3千人程度(2011年)であると厚労省が発表している病です。

 子宮にがんが生じるため、患者は女性です。発祥のピークは 40〜50 歳代が以前は多かったのですが、20〜30 歳代の女性にも症例が増えたことがあり、ピークは30歳代後半に推移したという経緯があります。

 国内で年間3千人が亡くなる病気を放置しておく理由など存在しません。早期発見を行うための検診や、発症後の手術とともに、予防に力を入れる方針が採られることは当然と言えるでしょう。

 

 予防の際、『ワクチン接種』が有効な手立てとして採用されることが一般的です。公的助成が始まったこともあり、子宮頸がんワクチンの接種が効果が高い女子中学生から高校生を中心に行われました。

 ところが、接種後に「全身の激しい痛み」、「漢字が書けなくなるなど知力が低下」、「光がまぶしすぎる」などといった訴えが相次いだのです。

 訴えを知ったメディアは患者に寄り添う姿勢で報道を行います。(無垢な)若い女性が落ち度もないにもかかわらず、かわいそうな目にあっている。“センセーショナルな記事” を作りやすい格好のテーマと言えるでしょう。

 “ジャーナリスト” を名乗るメディアが慰安婦報道と同じ構図を思い描き、被害にあった彼女たちの代弁者として製薬企業や国を加害者としてバッシングに勤しんでいたのです。しかし、「子宮頸がんワクチン問題」を掘り下げると、メディアにとって不都合な実態が浮かび上がってくるのです。

 

 1つ目は名古屋市が実施した子宮頸がんワクチンに対するアンケート結果です。

 子宮頸がんワクチンの接種により、全身痛・光過敏・筋力低下などが起きた “薬害” だとメディアは報じて来ました。しかし、アンケートからワクチン接種をしていなくても同様の症状を訴える少女が散見されている実態が明らかになったのです。

 7万人規模のアンケートで「症状の頻度に(接種者と非接種者の間で)差がない」「むしろ非接種者の方が(症状の頻度は)多い」という結果だったのですから、少なくとも “薬害ワクチン” などと決めつけてはならないことなのです。

 

 ワクチンの安全性については医学分野で判断すべきことです。ですが、「子宮頸がんワクチンに問題がある」と述べた信州大学副学長である池田修一医学部長の調査が捏造との指摘が出ているのです。

  • 実験で使用されたのは遺伝子異常のある特殊なマウス
    • 飼っているだけで数ヶ月も経過すれば、神経細胞死が生じる
    • ワクチンを打たなくても、自己抗体が生じる
  • このマウスにヒト換算で100倍のワクチンを接種
  • そのマウスから採取した血清を正常なマウスの脳にふりかけた
  • 子宮頸がんワクチンだけが光っていた画像およびグラフは断切片の1つで偶然起きたもの
    → 科学的な意義は限りなくゼロ

 上記の行為が実際に行われていたのであれば、STAP細胞を超える捏造事件と言えるでしょう。信州大学は調査委員会を設置する方針であると朝日新聞が報じています。

 信州大学は27日、子宮頸(けい)がんワクチンの副作用などを研究している厚生労働省研究班代表の池田修一教授(脳神経内科)の発表内容について、不正を疑う通報があったとして学内に調査委員会を設置する方針を決めた。

 “リケジョ” などと持ち上げていたマスコミが、まっとうな科学報道ができるジャーナリストに生まれ変わったのかが焦点です。

 

 「かわいそうな女の子たちの代わりに国や製薬会社という悪にペンの力で正義の鉄槌を下している」と鼻息の荒い記者たちが科学的アプローチに基づく記事を書くことができるのかという言い方もできるでしょう。

 自らが信じる “正義” を過信する姿は慰安婦報道に携わった記者と同じです。感情論で世論を煽ったところで、証拠の提示が求められる裁判では無意味だったことはイレッサ訴訟の時(原告の全面敗訴)に学習したはずです。

  1. 治験段階で副作用の症例は少なく、間質性肺炎がイレッサによるものと断定できなかった
  2. 問題報告を受けた厚労省はただちに製薬会社に添付文書(間質性肺炎が生じる場合があり、異常が認めらた場合は投与を中止し、措置を行う)の改定と緊急安全性情報の作成を指示している
  3. 弁護団が国に責任転嫁を行った
    → 副作用を説明しなかったのは一部の主治医であり、大部分の医師は患者から十分なインフォームドコンセントを得て治療を行っていた

 メディアがセンセーショナルに「子宮頸がんワクチン問題」を取り上げようとするほど、本職の医師や本物の医療・科学ジャーナリストが真正面からデータを提示して反論をしてくることが予想されます。

 

 根拠を示せない方がネット上で炎上することになるでしょう。ガヤがどれだけ炎上しようと誰に気にしないのですが、感情論による対応を求める勢力の声が大きいことは患者にデメリットを与えるだけであることに気づかなければなりません。

 実験や調査結果、根拠に基づく報道をすることがメディアの役割です。検証を行うことを軽視した煽り報道は誰からも求められていない姿勢であることを知るべきなのではないでしょうか。