「生前退位」の意向により浮かび上がった憲法改正の必要性

 天皇陛下が「生前退位」の意向を示されているとNHKがスクープしました。

 ただ、皇室制度を定めた皇室典範には退位に対する規定は存在しないため、陛下の意向を尊重するのであれば、改正することが必須となります。また、憲法についても同様に改正を議論する必要があると言えるでしょう。

 

 天皇陛下が、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示されていることが分かりました。数年内の譲位を望まれているということで、天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表わす方向で調整が進められています。

 

 陛下は82歳となった現在も公務を続けられています。今年3月にインフルエンザで公務を休まれた際に、2015年の年間休日が82日(月平均6.83日)と激務であった実態が報じられ、驚きの声が出た経緯があります。

 “国民の象徴” という立場にあるとは言え、ブラック企業のような勤務実態は異様です。

 また、「昔に比べ、公務の量が非常に増加していることは事実です」と陛下自身が発言されていることも見落とせません。体力に絶対の自信を持っている人であっても、仕事量が激増すれば、手に負えない状況に陥るはずです。

 天皇陛下の負担軽減を議論し、結論を陛下に提案することは政治家に課された役割と言えるでしょう。

 

 「生前退位」の意向を陛下が本当に持っておられるのかを確認する術が確立されていないため、報道が一人歩きするリスクは存在します。しかし、将来的に陛下が「生前退位」を強く希望された場合、“手続き” や “退位後の陛下の役割・立場” が全く定義されていないことは問題です。

 日本国憲法では『第一章 天皇』の項目で、天皇の地位や役割が明記されています。ところが、皇位を後継者に譲り、太上天皇(上皇)となられた場合の規定がまったく存在しないのです。

 「どういった立ち位置となるのか」という点がない状態なのですから、想定外で片付けられるテーマではありません。『上皇』という立場をどう定義するのかを決める必要が生じていることを否定することはできないと言えるでしょう。

 少なくとも、“護憲派” が主張するキレイゴトで誤魔化しきることは不可能だと考えるべきではないでしょうか。

 

 現状では生前退位し、『上皇』という立場になれば、政治的な意見表明を行うことに制約はありません。“かつて天皇の地位にあった者の見解” を利用したいと考える不届きな輩は存在するのですから、憲法改正を行う必要はないと結論づけることは問題です。

 特に、人権を尊重する姿勢を見せるリベラル派ほど、陛下が「生前退位」を希望された場合に備え、滞りなく退位ができるように準備をしておく必要があります。

 陛下の御意向を無視するような勢力は信用すべきではないでしょう。少なくとも、陛下の御意向と報じられた内容は国民が理解・共感できるものであり、現行の法律が規定が合致していないことは明らかです。

 陛下が御意向を翻意される可能性もありますが、「生前退位」の御意向を固める可能性も同様にあるのです。どちらを選ばれても問題がないように準備しておくことがリスクマネージメントと言えるのではないでしょうか。