ロシア選手団を締め出そうとするIOCの方針は明らかな過剰反応

 国際陸連はロシアの陸上選手に組織的なドーピングがあったとしてリオ五輪への出場を認めないとの判断を示しましたが、IOCもその意向を汲み取る可能性があるとNHKが報じています。

 

 CAS=スポーツ仲裁裁判所の21日の裁定で、ロシアの陸上選手は、原則としてリオデジャネイロオリンピックに出場できなくなりました。今後は、IOC=国際オリンピック委員会がこの裁定を踏まえ、ロシア選手団のリオデジャネイロオリンピック出場をどのように判断するかが、最大の焦点となります。

 

 「ドーピングに手を染めた選手の出場権を剥奪すること」に反発する声はまず起きないでしょう。もちろん、ロシアもこの主張には賛同するはずです。

 ここで問題となるのは、ドーピングをしていた証拠はないが、疑わしい立場にいると思われる選手です。

 いわゆる “グレーな選手” への対応なのですが、ロシアだけに疑わしい選手がいる訳ではないことが事態をややこしくしている原因になっています。

 

 IOCや国際陸連は「ロシアが国家ぐるみでドーピングをしていた」と判断しているため、ドーピング検査で引っかからなかった選手もドーピングをしていた可能性があると見ています。

 確かに、ロシアで検査をすれば、その可能性はあるでしょう。しかし、トップアスリートは国際大会に出場しているのですから、ロシア政府の協力だけではドーピング検査を欺くことは実質的に不可能なことです。

 “検体のすり替え” という手口はロシアの検査機関でなければ使うことができません。ロシア国外でもその手口によって、ロシア人選手がドーピング検査をすり抜けていたと言うのであれば、ロシア人選手以外の選手にも疑いの目を向けなければなりません。

 つまり、ロシア国外で開催された国際大会に出場し、そこでドーピング検査を受け、シロと判定された選手を「ロシア人選手だから」という理由でオリンピックから追放するには無理があると言えるでしょう。なぜなら、ドーピング・コントロール的には他の選手と同じ状況にあるからです。

 

 柔道・レスリング・自転車などロシア国外で開催された主要国際大会で成績を残しているトップレベルのロシア人アスリートは多数存在しています。クロという証拠を提示することができないIOCに選手たちを締め出す権限はないはずです。

 フェアな大会を求めるのであれば、出場資格についても全選手に対し、同じ基準を適用しなければなりません。最も偏っているのは実は大会主催者だったというオチはシャレにならないことを認識する必要があるのではないでしょうか。