プーチン大統領の来日が決定、そこで発表される成果に注目

 ロシアのプーチン大統領が日本を公式することで合意したとNHKが報じています。安倍首相の地元である山口県で会談する予定とのことですが、首脳会談でどのような成果が発表されるのかが最大の注目点と言えるでしょう。

 

 ロシアを訪れている安倍総理大臣は、プーチン大統領との首脳会談に臨み、大統領が日本を公式訪問し、12月15日に安倍総理大臣の地元・山口県で改めて会談することで合意しました。安倍総理大臣は、12月の会談で北方領土問題の前進を図り、一定の成果を出したい考えで、今後、両政府間の協議が活発化することが予想されます。

 

 日本とロシアは隣国という関係ですが、平和条約が締結されていない間柄でもあります。その原因となっている問題が「北方領土の帰属問題」なのですが、問題を解決する筋道を立てられるかが会談の成否を握っていると言えるでしょう。

 今年、2016年は11月8日にアメリカ大統領選挙が実施されます。新大統領の就任式は2017年1月20日が予定されており、11月8日以降はオバマ大統領が完全にレームダック化するととなります。

 そのため、アメリカが敵国視しているロシアと “何らかの合意” を発表するのは横槍が入らない今回のようなタイミングが理想的です。

 おそらく、事務レベルでの交渉はプーチン大統領との次回会談(11月にペルーで行われるAPECに合わせて開催)に向け、加速することになるでしょう。しかし、落とし所を見つけることは簡単ではありません。

 

 平和条約を締結することが日本・ロシアの両国にとってメリットが存在することは明らかです。

 仮に「北方領土の帰属問題」が解決されたとしても、解決後に生じる問題への対応も事前に準備しておく必要があります。以下の2点が主な問題として、領土の帰属が日本に返還された際に生じることが予想されます。

  • 北方領土に住むロシア人の処遇
  • 北方領土のインフラ整備費用

 

 1つめは「現時点で北方領土に住んでいるロシア人の処遇」です。「日本の領土だから、出て行け」という主張を行うことは可能ですが、その姿勢を行うと両国間の関係は悪化することになるでしょう。

 また、北方領土には彼らの財産や資産が存在する訳であり、帰属が日本になれば、そこで生活するロシア人が自然にロシア領土に引き上げる保証は 100% ではないのです。

 ただし、この問題はビジネス的に解決することが可能と言えるでしょう。なぜなら、日本国が北方領土に現住するロシア人の資産をプレミア価格を付けて買い取ることでロシア人の大部分を移住させることができ、問題を解決することができるからです。

 住民の割合が日本人が多数派となり、日本的な価値観が北方領土でのスタンダードとなれば良いのですから、ハードルはそれほど高くないはずです。

 

 しかし、2つめの「インフラ整備」には多額の費用が不可欠という財政的な問題があります。問題の原因となるのは北方領土の大きさです。

表1:北方領土の面積(単位:平方キロメートル)
名称 面積
択捉島 3,184 ㎢
鳥取県(3,493 ㎢)
国後島 1,498 ㎢
沖縄本島(1,211 ㎢)
色丹島 253.3 ㎢
隠岐島(244 ㎢)
歯舞群島 99.94 ㎢
小笠原諸島(104 ㎢)
合計 5,036.14 ㎢
千葉県(5,146 ㎢)

 「二島返還論」で名前が出ているのは色丹島と歯舞群島。ロシアが過去に領土問題の解決で利用した「面積等分論」を適用すると、色丹島・歯舞群島・国後島の3島+択捉島の2割ほどが日本の領土に復帰するという計算になります。

 どういう形でどれだけの領土が返還されるのかは現時点では不透明です。しかし、実際に返還された際には “ある程度” のインフラ整備は確実に必要となり、その対象となる面積がかなり大きいという現実から目を背けてはなりません。

 つまり、北方領土で「健康で文化的な最低限度を送ることができる環境」を作ることが国としての責務となる訳です。そのために必要となる予算をどこから確保するのかという点でも議論を進める必要があります。

 

 平和条約が締結されていない国同士が条約締結に向け、具体的な交渉のテーブルに着いたという点だけでも一定の評価はされるべきでしょう。

 交渉妥結後の評価は具体的な進展があったからすべきことです。マスコミが報じるべき内容は交渉が難航すると思われる懸念点を示し、有効と思われる具体的な対策は何なのかを論じ、報道することです。

 それを報じないのであれば、余計な動きをせず、政府の公式発表を待つべきと言えるでしょう。