G7の中で “共謀罪” が存在しないのは日本だけという現状は問題だ

 日本政府は共謀罪に対する要件を改正する組織犯罪処罰法の改正を来年の通常国会で提出する方針で調整を行っていると読売新聞が伝えています。

 ただ、先進主張国であるG7の中で “共謀罪” を罰する法律が日本だけ存在しないという現実はテロの驚異が高まっている現状を考慮すると異様なことであると言えるでしょう。

 

 政府は15日、重大犯罪を計画した段階で処罰対象とする「共謀罪」の構成要件などを改める組織犯罪処罰法改正案について、臨時国会への提出を断念する方針を固めた。

 与党内に慎重論がある上、臨時国会に重要法案の審議が立て込んでいるためだ。来年の通常国会提出に向けて、改めて調整に入る。

 

 重大犯罪に該当するような事案を単独で起こすにはハードルが高いことが現実です。ほとんどの場合は『組織』として立案された計画に沿って、実行されている状況となっています。

 では、ほとんどの国で共謀罪が存在する理由は何か。

 これは実行犯を安全な場所から裏で操る “黒幕” に捜査の手を伸ばす必要があるからです。もちろん、現行法律でも実行犯や関係の深い人物は共犯として処罰することは可能です。しかし、「関係性は薄い」と強弁すれば、裁きを受けずに済む余地も大きく残されているのです。

 

 この関係は『振り込め詐欺』を行う組織と似ていると言えるでしょう。ATMから騙した金を引き出したり、現金を受け取りに行く人物は “組織の末端” に位置する者たちです。

 犯罪の実行犯であり、刑法による処罰を受ける対象です。しかし、組織の上層部に位置する者たちは『振り込め詐欺』の “上がり” を受け取る立場にいますが、実行犯との関係は希薄であるため、組織の全体像が把握されない限り、法の裁きを受けることはありません。

 この手の犯罪を計画・立案に携わった者がいるのであれば、社会に重大な影響を与える犯罪行為を企てる行為に関わった人物も法に基づき罪に問うべきではないでしょうか。

 共謀罪はこのようなロジックを基に世界中の先進国で法整備が行われているのです。

 

 日本のリベラル界隈は “共謀罪” に批判的な論説を展開しています。しかし、日本を除くG7では共謀罪に相当する法案は既に存在しているのです。

 この現実に対し、どういった見解を持っているのでしょうか。「日本だけが共謀罪を創設する」というのであれば、リベラル派の主張にも説得力があるでしょう。ですが、実態は真逆なのです。

 「安心・安全」という日本のイメージを過信している印象があります。安心や安全はタダではないのです。そのために必要な手間暇や時間、コストを惜しんでは前提条件そのものが崩れ去ってしまうリスクがあることを完全に見落としてしまっています。

 

 “スパイ天国” というレッテルを貼られただけでなく、“テロ育成天国” も追加されるようなことがあれば、冗談では済まなくなります。社会が不安定になった方が報道ネタを豊富に得られるマスコミは諸手を挙げて歓迎することでしょう。

 そのしわ寄せを世間一般に押し付けるのは迷惑きわまりないことと言えるのではないでしょうか。