ドイツ発の銀行不安がヨーロッパに連鎖する可能性あり

 9月29日のニューヨーク株式市場は『ドイツ銀行』の資金不足への懸念から、ダウ平均株価が195ドル下がったとNHKが報じています。

 『ドイツ銀行』だけが経営の先行きが怪しいという状況ではありません。他行からもネガティブなサインが出ており、悪い状況が連鎖的に発生し、欧州発の第2リーマンショックが起きる可能性も十分にあると言えるでしょう。

 

 29日のニューヨーク株式市場は、資本不足が懸念されているドイツ最大手の銀行「ドイツ銀行」の経営不安が金融システムに影響を与えることへの警戒感から、売り注文が広がりました。

 

 『ドイツ銀行』を取り巻く環境が悪化したのはモーゲージ担保証券の不正販売問題で、アメリカ司法省から巨額の制裁金が課されたことに端を発したからと言えるでしょう。額が大きかったこともあり、公的支援を受けるのではないかというネガティブな観測が広がりました。

 ドイツ国内では「難民問題」で国民の不満が燻り続けている状況に加え、フォルクスワーゲン社の「燃費偽装問題」も横たわっています。そこに「ドイツ国内の銀行問題」も加わるのですから、経済の見通しは暗くなるでしょう。

 

 ドイツで経営が危ぶまれている銀行は『ドイツ銀行』だけではありません。ロイター通信によりますと、コメルツ銀行は正社員の2割以上を解雇したとのことです。

 金融危機時に支援を受けたコメルツ銀行(CBKG.DE)は、正社員の2割以上に当たる9600人の人員削減と当面の配当支払い停止を発表した。これを嫌気し同行株価は3.1%下落。ドイツのクセトラDAX指数.GDAXIの構成銘柄の中で最も大きく落ち込んだ。

 正社員の2割以上を解雇し、株式の配当も停止すると発表したのです。「配当も止める」ということは企業の運転資金が足りなくなる事態を避けるためと見ることができるため、株が一気に売られたということでしょう。

 取り付け騒ぎが起きたとなると、市場では「今のうちに引き出しておこう」という心理から悪循環が加速します。問題がないことを資金力のある政府などが発信しない限り、沈静化しにくい性質を持っているため、ドイツ政府の舵取りがポイントになると思われます。

 

 個人の預金客が口座から現金を引き出すためにATMに並んでいるシーンはニュース映像としてのインパクトは強大です。しかし、ヘッジファンドのような大きな資金をストックしている法人が引き出しをした時の方が経営へのインパクトは強いと言えるでしょう。

 ドイツで生じた “銀行不安” が経営体力の乏しい銀行が多数存在すると見られているイタリアに波及すれば、ウニクレディットやシエナにあるモンテ・パスキ銀行が破綻の瀬戸際に追い込まれる可能性が現実味を帯びます。

 その波はスペインにも当然押し寄せるでしょうから、サンタンデール銀行などにも影響が生じると思われます。問題が生じた初期段階での対応を謝ることがなければ、地域規模の損害で止めることができます。その決断を当該国のトップができるかが周辺地域に悪影響を及ぼすかの大きな分かれ目になるのではないでしょうか。