ロシアが希望するシベリア鉄道延伸計画、日本のメリットとデメリットは?

 プーチン大統領来日の時期が迫りつつある中、日露間の経済協力の具体案がメディアで報じられるようになりました。

 産経ビズでは「シベリア鉄道の延伸」による日本とロシアの直通運転をロシア側が強く要望していると報じています。それによるメリット・デメリットを考察することにしましょう。

 

 日本の対露経済協力をめぐる政府間協議の中で、シベリア鉄道を延伸し、サハリンから北海道までをつなぐ大陸横断鉄道の建設案が浮上していることが2日、明らかになった。両国間の物流だけでなく、観光など人的交流の活発化につながるとして、ロシア側が強く要望しているという。

 シベリア鉄道の延伸計画は、アジア大陸からサハリン(樺太)間の間宮海峡(約7キロ)と、サハリンから北海道・稚内間の宗谷海峡(約42キロ)に橋かトンネルを架けて建設する構想だ。実現すれば、日本からモスクワや欧州を陸路で結ぶ新たなルートとなる。

 

 まずは計画として浮上した延伸に欠かすことのできない橋やトンネルの建設予定地を地図上で確認することにしましょう。

画像:シベリア鉄道延伸によるサハリン開発

 シベリア鉄道はロシア極東のウラジオストクからモスクワまでの鉄道路線。今回の延伸計画ではアジア大陸からサハリンを経由し、北海道へ海底トンネルで鉄道網を接続させるというものです。

 サハリンには日本が敷設した鉄道路線が現在も残されています。用地などを上手く再活用する意図を持っていると言えるでしょう。

 

 シベリア鉄道延伸によるメリットとしては、ロシア側が述べるように「物流能力の増加」、「インフラ需要」、「人的交流などの活発化」が代表例になります。メリットがあれば、当然デメリットも存在します。

 1番のデメリットは「延伸に費やしたコストをペイするかが不透明」であることです。

 海上輸送より鉄道輸送の方が短期間で済みます。しかし、輸送ニーズそのものが少なくなってしまうと、新たに鉄道網を接続する意味がなくなってしまうのです。また、インフラ需要についても、日本国内での恩恵部分が一般社会には見えにくく、(シベリア鉄道の延伸を)世論が後押しする理由になりづらいこともデメリットと言えるでしょう。

 むしろ、鉄道網が直結したことで「ロシア軍がそれを使い、軍事行動を起こすのでは」という懸念の方が大きくなると思われます。

 

 ですが、その懸念はロシアも持っているのです。日本軍は過去に『樺太作戦』や『シベリア出兵』の際に、ロシア・サハリンに軍事侵攻しています。

 鉄道網が直結し、軌間(=線路幅)が統一されると利便性が増すことを意味しますが、軍事面では双方ともにリスクを負うことになるのです。両国ともに懸念事項と捉えているのですから、この部分で合意点を見出せなければ『シベリア鉄道の延伸』が具現化することはないと言えるでしょう。

 まずは日露間で平和条約が締結されることが大前提です。そのためには「北方領土問題を解決する」という最難問とも言える課題で結果を出す必要がありそうです。