「いじめの情報共有」が問題解決になると信じるオメデタイ有識者たち

 朝日新聞によりますと、文科省の有識者会議で「いじめの情報共有」を徹底させ、怠るのであれば懲戒処分に科すという周知を行う方針が固まったとのことです。

 教育現場の実情を調査せずに、“有識者” が会議を行うとこのような結論になるのでしょう。教員の疲弊度が加速するだけになる可能性が大いにある施策だと思われます。

 

 文部科学省は公立学校の教職員に対し、いじめ防止対策推進法で義務づけられた学校内でのいじめに関する情報共有を怠った場合、懲戒処分の対象になり得ることを周知する検討を始めた。法施行から3年になるが、担任がいじめの情報を抱え込むなどして組織的な対応が行われず、子どもの自殺につながるケースが後を絶たないことが背景にある。

 一方、教職員の多忙さなどが指摘される中、情報共有を怠ったかどうかの認定には難しさも伴うとみられる。また、教員の萎縮につながるとの指摘もあり、慎重な運用が求められる。

 

 まず、“いじめ” という問題は教員が解決しなければならないという前提が間違っています。内容は誹謗・中傷や暴行・傷害という刑事事件なのですから、学校内での “いじめ問題” は警察事件として対処すべきものなのです。

 教職員など学校側に捜査権限はありません。

 学習の場であるにも関わらず、家庭内でのしつけなどを含めた生活指導まで学校側が担っている現状では教員側に時間的な余裕など存在しないのです。授業の準備に加え、担任であれば、クラスの状況をチェックし続けなければなりませんし、クラブ活動の顧問も半強制的に就任させられ、休日をまともに取得することすら困難な状況です。

 そこに非行やいじめ問題が加われば、すぐに仕事量で身動きが取れなくなるでしょう。

 

 ほとんどの教員が通常業務や学校行事の用意で手一杯である時に、“いじめの情報共有” が義務付けられたとして、誰が対処に当たることができるのでしょうか。

 「学校側が調査チームを作って対処すべきだ」とテレビでコメンテーターが主張したところで、「現場に人的リソースは残っていない」という現実が突きつけられるのです。それとも、いじめ問題の疑いがあるとの報告があれば、解決するまで学校の授業をすべてストップさせますか?

 それは不可能な選択肢と言われるでしょう。なぜなら、関係のない生徒が教育を受ける権利を阻害することになるからです。

 そして、いじめ加害者の生徒を出席しようとすると、普段はいじめ問題で被害者に寄り添う姿勢を見せているリベラルほど「生徒が授業を受ける権利を阻害するな」と加害者に肩入れするから被害者側が泣き寝入りを強いられることになっているのです。

 

 では、どうするか。文科省が「いじめの情報共有」を徹底させるのであれば、その動きに学校側も乗れば良いのです。

 学校側では「いじめが起きていた」と訴えがあった状況に対し、第三者に事実関係を説明できる証言や証拠を集めることに重点を置くことを優先します。私立校では生徒を退学させる権限があるので、ある程度は学校内で解決することができるでしょう。

 その選択肢がない公立の小・中学校では、「出席停止処分に科すべき」といじめ被害者の保護者が主張した場合、「生徒〇〇を□日間の出席停止処分と科す」という処分案の執行する採決を地元の市町村議会に求めれば良いのです。

 学校側が生徒の証言・証拠を収集したことをまとめ、学校長などが議会に報告し、判断を委ねるのですから最終的な責任の所在が明確になります。また、ネット上での問題行為は警察の管轄分野という認識が世間にも広がる期待が持つことができますので、問題の全責任を学校側が強制的に負わされることもなくなるでしょう。

 

 ネット社会で誰でも情報発信をできるようになったこともあり、便宜を図ろうとした議員は全国からバッシングを受けるリスクがあります。

 仮に、問題議員がSNSアカウントや公式ホームページを持っていない場合でも、所属する政党や地方議会のアカウントなどが炎上することになるでしょう。内々で解決しようとすれば、問題がこじれるケースも存在することを忘れてはなりません。

 「問題解決に全力を尽くせ」とプレッシャーをかけるのであれば、それに応じた権限を与え、当事者が下した判断を支持することが絶対条件です。権限を付与せず、叱咤するだけでは現場が疲弊するだけで、プラスにならないことを “有識者” としてもてはやされている人々は知るべきなのではないでしょうか。