反政府勢力が市民に紛れて戦闘を続ける限り、シリアへの空爆が収束することはない

 ロシアがシリア北部の都市アレッポへの空爆を前倒しする形で停止しましたが、根本的な解決にはならないとの見方が出ているとNHKが伝えています。

 シリア騒乱の根幹部分は “アサド政権の正義” と “反アサド勢力の正義” が対立しているからです。真逆の主張が同意に達することはないでしょう。

 

 アレッポでは、この発表直前の18日の明け方まで、政権側による激しい空爆が続き、市民に死者やけが人が出ているほか、地上での戦闘は依然続けられています。アレッポでの戦闘について、現地の主要な反政府勢力の広報担当者は18日、NHKの電話取材に対し、「約束をいつも破ってきたロシアの発表を信じることはできない。アレッポを出て行く戦闘員は誰もいない」と述べて、退避せずに引き続き戦闘を続ける考えを示しました。

 

 異なる価値観の “正義” が対立しているのですが、力の関係が拮抗していることが混乱が長引いている要因です。

 当初は「アサド政権 vs 民主化を求める国民」という構図だったのですが、武力衝突が起き、それが過激派を引き寄せる “呼び水” となったのです。その結果、「アサド政権 vs 反政府勢力」という形に変わることとなりました。

 両者ともに、軍事支援を行う国がバックに付いているのですから、どちらかが殲滅するまで争いは続くことになるでしょう。

 

 「アレッポの街が消える」と国連シリア特使が主張していますが、反政府勢力に理解を示すことなど不可能なことです。反政府勢力の存在を容認する主権国家は地球上に存在しないでしょう。

  • アサド側:人権侵害などで問題はあるが、シリア国の正統な政権。国連にも加盟済の国家
  • 反政府側:アサド政権の圧政に立ち上がった勢力。武力を用いるテロリストと五十歩百歩

 多くの国家はシリア騒乱でどちらを支持するでしょうか。当事国でない限り、「どちらも積極的には支持しない」と消極的なスタンスを採る国がほとんどでしょう。わざわざ火中の栗を拾いに行くメリットはどこにもないからです。

 

 また、アレッポの街に激しい空爆が加えられる理由は「反政府勢力が21世紀型のゲリラ戦略を採用しているから」です。

 街中で一般市民に紛れ込んでしまえば、相手から発見されるリスクは格段に下がります。攻め込まれた際は待ち伏せなどのゲリラ先着で対応できるのですから、反政府勢力にとっては理想的な状況と言えるでしょう。

 ただ、この戦法にも弱点があり、住民から支持を得られていない場合や補給路を遮断されて兵糧攻めをされた場合は瓦解することが考えられます。つまり、反政府勢力がアレッポで戦い続ける限り、アレッポの街で被害は起き続けることを意味しているのです。

 玉砕戦術を採ることを宣言したに等しい状況なのですから、どちらかの勢力が壊滅するまで戦闘は続くことが予想されます。

 

 『勝てば官軍』の世の中ですから、反政府勢力も勝利すれば、立場が真逆になる可能性があります。しかし、長期戦になるほど立場は厳しくなるでしょう。

 チベットなど政権の姿勢に反する勢力は世界中に存在していますが、政府規模で支援を表明している国家がないことからも明らかです。納得ができない国の指導者を諸外国の都合の良いリーダーに変えることは非常に困難だと言えるのではないでしょうか。