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コンテナ船事業が “ドル箱” として海運業に君臨する時代は終わりに差し掛かっている

経済

 日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社がコンテナ船事業を統合することを発表したことに対し、日経新聞は11月1日付の社説で「グローバル競争を勝ち抜く海運再編に」とエールを送っています。

 ただ、時代の流れを考えると、コンテナ船事業が海運業の中核として君臨することは難しくなっています。その点を踏まえて、中長期の経営戦略そのものを見直し、企業の方向性を修正すべき時期が訪れていると言えるでしょう。

 

 海運は輸出入を支えるインフラで、コンテナ船はその中核だ。ただ、足元の事業環境は厳しい。世界経済の成長鈍化や資源安で需要が低迷する一方、発注済みの大型船の竣工が続きコンテナ運賃は歴史的な低水準にある。

 企業が消費地の近くで生産する立地戦略を進めた結果、世界の貿易量が構造的に伸び悩むようになった、との見方も強まっている。逆風下のグローバル競争を勝ち抜くため避けて通れない道が、3社の事業統合だといえる。

 

 海運のニーズは世界的に低下している傾向にあります。その大きな理由は企業が経営の効率化を求めた結果、現地生産をする方が合理的と結論付けたためです。

 原材料となる農作物・鉱物が海上輸送される量に変化はないでしょう。しかし、原材料を加工する工場・施設を本社のお膝下近くに置き続けるメリットは人件費などのコスト面から薄れており、消費地の近くで必要な分量だけ生産・販売する方が理想的なことなのです。

 

 海運大手3社はそのトレンドによる影響を受けたと言えるでしょう。日本は「加工貿易の国」として大きく経済成長しましたが、コスト増など製造業にとって厳しい環境になったため、企業が生産拠点を国外へと移してしまいました。

 この動きは日本企業だけに限定したものではなく、アメリカ企業はメキシコへ、ヨーロッパは東欧へと人件費の安く、今後の市場規模拡大が見込める国へと生産の比重を移す結果を招くこととなりました。そのため、貿易の絶対量が減少することになったのです。

 それに加え、日本では隣国・韓国からの影響も受けることになりました。船舶を大量に造船し、それを韓進海運が使う形でダンピングに近い低賃金で輸送を請け負ったため、業界全体としても厳しい状況に陥っています。

 輸送のニーズそのものが減少していることへの対応策を打ち出すことは海運業界としては難しいものがあるでしょう。しかし、市場を混乱させる “焼畑戦術” を用いる企業を追放することはできるはずですし、やらなければなりません。

 

 仮に、海運大手3社がコンテナ船事業が行き詰ったとしても、経営への影響はそれほど生じないと思われます。なぜなら、コンテナ船を使った定期航路による貨物輸送事業は主力と呼べるだけの貢献をしていなかったからです。

 現在の “ドル箱” はLNG運搬船の臨時航行です。

 原発の再稼働を止めた分はLNGを用いた火力発電で代用されています。その燃料を輸送するために臨時便という形で中東から日本に向けて運行されているのですから、“ドル箱航路” になっているのです。

 海運大手3社は原発再稼働に消極的なスタンスを採ることでしょう。LNGのニーズがあれば、輸送需要が生まれ、それは自分たちの売上高・利益を押し上げることに貢献するからです。

 反原発運動をするのであれば、こうした業界から支援を取り付けておくことは有効な方法の1つとなるはずです。

 

 もし、『コンテナ船』という伝統ある王道で勝負するなら、TPPが業界復活に向けた足がかりになるでしょう。TPPは太平洋に面する国々の経済貿易協定であり、輸送は空路か海路の2択になることが濃厚だからです。

 新しいニーズが生まれる可能性が期待できますし、大量輸送のメリットを活かすことができれば可能性も生まれることが期待できます。そのためには「ニーズを喚起するための活動」を他の企業とコラボレーションする必要があるのではないでしょうか。