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日露間の送電線およびパイプライン計画は有益なオプションだ

 プーチン大統領の来日が間近に迫っていることもあり、具体的な経済協力案が報じられるようになって来ました。

 具体的には宗谷海峡の海底送電線による送電構想や、天然ガスパイプラインを敷設するプランが浮上しています。しかし、計画が進むかは平和条約が締結されてからになるでしょう。

 

 宗谷海峡の約50キロを海底ケーブルでつなぐことを想定している。ロシアの大手電力幹部は、費用は最低57億ドル(約6000億円)との見通しを示しており、作業部会で事業費や工程などを協議するとみられる。費用負担などを巡り、厳しい交渉が予想される。

 

 サハリンには石油や天然ガスという資源が豊富ですので、ロシア側としてはそれらを輸出することで外貨を獲得したいという思惑があるのでしょう。

 ただ、北海道で消費する平均電力は400万kWと規模は小さいことは北海道電力が認めています。規模の大きい東電管内に送電するには北本連系設備(60万kW)を経由することが現状であり、北海道の電力需要に対応することが現実的なニーズと言えるでしょう。

画像:北電による日本国内の平均電力

 サハリンで火力発電した方が電気代コストはリーズナブルになります。しかし、泊原子力発電所で発電した方がそれよりも安価です。

 そのため、泊原発をフル稼働し、夜間など電力需要が少ない時間帯はロシア・サハリンに海底送電網を使って売電するような計画を立てることを考えるべきです。

 

 ロシア・サハリンとの経済協力でよりインパクトが強いのは産経新聞が報じた天然ガスのパイプライン敷設計画でしょう。

画像:日露間の天然ガス・パイプライン計画(産経新聞)

 サハリンから東京湾まで敷設する計画なのですが、隠されたメリットがあることを見落とすと安倍政権が大きくポイントを稼ぐ結果になります。

 ロシアからのパイプラインによる最大の懸念事項はエネルギー源の首根っこをロシアに握られることでしょう。EU諸国やウクライナがガス供給で毎冬のように翻弄されていることを懸念しているからの主張だと考えられます。

 

 ただし、その原因を確認すると、日本が同様の事態に陥る可能性はかなり低いと言えるでしょう。ロシアは天然ガス料金を両国間関係に基づき算定する傾向にあります。そのため、安い順に並べると以下のようになります。

  1. ロシア国内
  2. ロシアと友好関係にある国(ベラルーシなど)
  3. 中立国(東欧の小国)
  4. EU加盟国

 ロシアと “国家間の距離感” がある国ほど、料金は高くなります。これはEUがロシアに経済制裁を科しているのですから、その報復的な措置も含まれた価格設定になっていて当然です。

 しかし、現状の日本が輸入している天然ガスの価格はEU加盟国がロシアからパイプラインを通じて購入している値段よりも高いことを見落とす理由にはなりません。現状の天然ガス購入価格より安価で仕入れる可能性があるなら、計画を立てるだけでも価格交渉のカードになるでしょう。

 ちなみに、毎年ウクライナがロシアから天然ガスの供給が止められる理由は「ウクライナがガス代を踏み倒しているから」であり、ロシア側の責任ではありません。その結果として、ウクライナ経由のパイプラインが閉められ、ウクライナやその先の国へのガス供給が滞ることを招いているのです。

 

 最後に、パイプライン構想によるインパクトが大きい理由は敷設地に該当する地方自治体に多額の敷設料収入がもたらされることです。

 これは火災などが発生した際に必要となる消防用の設備が通常時とは異なるため、設備投資費が高額化しますし、環境回復などに要する費用を積み立てる必要があるためです。しかし、実際にはそのようなトラブルが起きることは世界中を見渡しても、ごく稀であり、自治体の財政を潤す設備になっている場合がほとんどです。

 パイプラインが敷設されると可能性のあるルートはTPP反対を打ち出している農業が主体と言える地域ですが、農業とは無関係の収入が該当地域の自治体に入る訳ですから、農業票による発言力低下が現実味を帯びることにもなるでしょう。

 

 エネルギー資源の輸入源を多様化することが可能になり、その結果として日本の価格購買力が増すのであれば、ロシアとの交渉を行うメリットはあると言えるでしょう。

 そのためには平和条約の締結が不可欠です。具体的な計画案として検討される余地があるのか、それとも研究課題として棚上げされていまうのか。条約交渉の行方に注目です。