久保建英に関するメディア報道は “話題先行型” で、選手の育成を妨げる障害となるだろう

 NHKを始めとする各メディアがJリーグの最年少出場記録を更新した久保建英選手(FC東京)をニュースとして取り上げています。

 ただ、出場した試合はJ3で、選手自身が育成段階であることを考えると、過熱気味となる報道は選手の成長を阻害する要因にしかならないと言えるでしょう。半年に1度程度の取材記事にメディアが自重できるかが鍵だと思われます。

 

 サッカーJ1、FC東京で15歳ながらトップチームに登録された久保建英選手が5日行われたJ3の試合に途中出場し、Jリーグの最年少出場記録を15歳5か月に更新しました。

 中学3年生の久保選手はスペイン1部の強豪、バルセロナの下部組織出身で、15歳ながらJ1、FC東京でトップチームに登録され、史上最年少でのJリーグデビューに注目が集まっていました。

 

 現状の久保選手は明らかに “話題先行型” の選手となっています。15歳という年齢でプロ選手が戦っているJ3の舞台に立ったことは歴史的なものですが、『出場すること』と『結果を出すこと』の間には大きな差があることを忘れてはなりません。

 なぜなら、『出場すること』については『結果を出すこと』と比較すると、難易度の高いことではないのです。例えば、ワンマンオーナーが率いるJリーグのクラブチームがあったとしましょう。オーナーが「この選手で最年少出場記録を作れ」と命じれば、『出場すること』は容易に達成することができるからです。

 しかし、『結果を出すこと』については、『出場すること』が大前提です。そのため、難易度のハードルは高くなっているのです。

 

 久保選手が才能に恵まれた10代の選手であることはバルサの下部組織(ラ・マシア)に所属していたことが示しています。また、2020年の東京五輪で主力選手として期待されるだけに、メディアが今から追いかけ、ドキュメンタリー用の取材映像を確保したいという動機もあることでしょう。

 ですが、本格的に取り上げるのは久保選手がJ3の舞台で圧倒的な結果を出してからでも十分に間に合うことです。

 10代の時点で抜きん出たテクニックを持っていたとしても、それがトッププロでも通用するレベルであるかは不透明です。また、そのテクニックを披露するために不可欠となるフィジカルを鍛えることも必須事項ですし、1プレーごとに注目される異様な環境下で落ち着いたプレーができるだけのメンタル面でのコントロール術を身につける必要性が生じることも予想されます。

 そのため、トップレベルで活躍するために課題を抱えている将来有望な若手選手にトップ選手と同じ内容を過剰に期待する報道内容は自重する必要があると言えるでしょう。

 

 才能のある選手が “早熟の天才” として、10代や20代前半のわずかな時間だけで輝きを放つことは残念なことです。

 高校野球で10代の将来有望なスポーツ選手(アマチュア)に取材を行うことが当たり前になっている日本では報道が加熱する可能性の方が高いと言えるでしょう。そのため、クラブ側が取材制限をかけ、選手に過剰なプレッシャーにさらされないように守る用意をしておく必要があります。

 「育成年代の選手に過剰なプレッシャーを与えない」という立ち位置のメディアもいるでしょうが、ルールを無視するメディアが必ず出てくるため、問題行為を行うメディアが現れるという前提でメディア対応の準備をしておくことは不可欠です。

 

 特に、フィジカル面での成長は時間を要するものですし、身体の使い方など相手選手からのチャージへの対処方法を確立するなども長期的なテーマとなるでしょう。ユース世代の選手がメディアの前に出るのは年に1〜2回程度で十分だと言えるのではないでしょうか。