労基法や労働契約法を改正しないかぎり、電通で起きた悲劇は再発するだろう

 社員の過労自殺が明らかになった電通で勤務時間の過少申告が蔓延している疑いが浮上したとNHKが伝えています。

 労働基準法36条に基づく “36協定” で定めた残業の上限に合わせるよう、上からの指導という形で横行していたのでしょう。これは電通だけでなく、ほとんどの企業で探せば発覚する問題です。

 

 厚生労働省は、労働基準法違反の疑いで7日電通の本社や支社に捜索に入り、社員の勤務記録などを押収しました。電通では、社員は勤務時間中の休憩や私的な用事など業務以外に使った時間を勤務時間から差し引くことになっていますが、これまでの調査で会社に申告した勤務時間が会社にいた時間より大幅に少ないケースが相次いで見つかり、中には月数十時間に上る社員も複数いたということです。

 

 日本の労働体系は「長時間労働の温床となりやすいシステム」のままです。この部分に着手しない限り、サービス残業が減ることはないでしょう。

 「残業代で賃金を稼ぐ」という悪しき風習もありますし、形だけの “裁量労働制” を採用し、仕事量と労働時間だけが増えるという悪循環も生まれています。

 抜本的な見直しができなければ、ジリ貧になることは目に見えていると言えるでしょう。

 

 時代の変化とともに、求められる仕事の内容・量ともに変化が生じることは自然なことです。組織として生き残るには「求められる仕事ができる人員を確保できるか」が課題となるのですが、労働基準法や労働契約法がネックとなっています。

 要するに、時代の変化に取り残された社員を減給・降格・解雇できないことへの “しわ寄せ” がサービス残業という形で社会全体に悪影響を及ぼしているのです。

 労基法や労働契約法を改正し、コストパフォーマンスが悪すぎる社員の賃金をカットできるようにするだけでも働き方は大きく変わるでしょう。時代遅れとなった部門でしか能力を発揮できない社員を金銭解雇できるだけでも、会社の人員配置は的確なものが可能となり、一部の社員に過剰な負担がのしかかることを回避できます。

 40代、50代で一目置かれる社員の方々が得ている現状の給与水準に文句をいう20代・30代はいないでしょう。問題なのは「20代・30代という経験の少ない社員よりも、少ない成果であるのに、40代・50代の高年俸をもらっている社員の処遇」なのです。

 

 減給・降格・解雇が(事実上、法律によって)できないのですから、企業は生き残りを図るために「昇給・昇格を凍結する」という方針を打ち出すでしょう。

 給与はアップせず、昇進もない。その状況で、仕事量とプレッシャーだけは年々増える訳ですから、精神的に病む人が続出して当然です。むしろ、平然と勤務できる人の方が “どこかが壊れている” と言えるでしょう。

 給与をアップできないなら、勤務時間の制限を減らすべきです。週休2日を週休4日として、給与水準や社会保障は同じとする逆転の発想をする企業があっても良いはずです。

 また、現場が無意味と判断した仕事を削減する取り組みを行う必要もあります。仕事へのプライオリティーを付けることができなければ、手が回らなくなることは誰の目にも明らかです。経営陣が実態を理解しているかが鍵になるでしょう。

 

 電通社員の方々は『鬼十則』ではなく、『裏十則』に基づき、自分の命を守るべきです。

  1. 仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
  2. 仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
  3. 大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
  4. 難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
  5. 取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
  6. 周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
  7. 計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
  8. 自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
  9. 頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
  10. 摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。

 『鬼十則』はコネ入社で能力に疑問符が残る人物用だと割り切る必要があるのではないでしょうか。真面目すぎる有能な社員ほど、『裏十則』の考えを取り入れ、息抜きをしなければなりません。