民主党寄りの大前研一氏が見限るほど民進党の劣化は深刻なのか

 雑誌『プレジエント』で民主党に寄り添い続けたきた大前研一氏が「さらば民進党」との見解を述べ、愛想を尽かしています。

 “ミスター年金” こと長妻議員を高く評価し、鈴木寛氏が戦った2013年の参院選で支持を表明するなど民主党議員を支援していた知識人も見限るレベルであることは政党として深刻な状況と言えるでしょう。

 

 一時的だったにせよ、当時の民主党があれだけの人気を得たのはなぜか。民主党が飛躍した選挙で目立ったのは、小選挙区において各都道府県の県庁所在地がある一区を民主党候補が取る「一区現象」である。

 (中略)

 たとえば医療問題では医師会重視の自民党に対して民主党は患者側に重きを置く。年金問題では年金機構ではなく年金受給者に重きを置くし、教育改革では教師や学校側ではなく、生徒や保護者に重きを置く。受益者側に重きを置くことで、予算配分もドラマチックに変わってくる。

 

 大前氏に “政治的センス” が備わっているかに疑問符を抱える人もいるでしょう。しかし、彼が以下のように分析した内容は正しいと言えるはずです。

  • 農村型
    • 有権者数:少
    • 政策による生活への影響が大きいため、声が大きい
    • ノイジーマイノリティ
  • 都市型
    • 有権者数:多
    • 給付の原資(=税)を納める側で、まとまった声がなく、小さいと見なされている
    • サイレントマジョリティ

 民主党政権が誕生するまでは「農村型の自民党 vs 都市型の民主党」という構図でした。しかし、政権与党になってから、その構図を民主党(当時)が自ら崩してしまったのです。

 

 “都市型政党” として、都市部で生活するサイレントマジョリティを代弁するはずが、農村部に給付金をバラ撒きを行い、自民党の劣化型政党に成り下がってしまったのです。

 また、大前氏が「都市型政党としての立場を採るべき」と主張する内容についても問題があることを見落としています。民進党内部にそのことを気づいている議員はいるでしょうか。

表1:大前研一氏が主張する立場の違い
政策項目自民党民進党
医療 医師会重視 患者重視
年金問題 年金機構重視 年金受給者重視
教育改革 教師・学校重視 生徒・保護者重視

 上記のように、大前氏は一貫して「受益者側に重きを置くこと」を主張しています。しかし、「予算は無限大にある訳ではない、医療・年金問題について現状でさえ恵まれている高齢者をさらに優遇するのか」と不満が噴出する原因になることは明らかです。

 

 どれだけキレイゴトを主張したところで、多数派に負担を押し付ける政策が支持を得ることはありません。

 医療費を無料すれば、患者は喜ぶでしょう。しかし、国民全体が負担を肩代わりするため、不公平感が強くなります。年金問題では現行ルールで現役世代ほど損をしますし、教育ではモンスターペアレントが社会問題となっています。

 要するに、受益者側に重きを置くスタンスを採ると、ブレーキをかけるタイミングを事前に明確にしない限り、利益誘導団体と何ら変わらない存在となるのです。

 「マイノリティ(=少数派)の意見も尊重される社会」は評価されるでしょうが、「マイノリティの意見が絶対的である社会」は独裁国家と同じです。民主主義とは相反する社会になるのですが、民進党の首脳部はそのことを理解しているのでしょうか。

 

 民進党の現状では『民主集中制』を掲げる共産党と非常に波長が合うことでしょう。建前の上の “民主的な議論” を一部の者たちで行い、決定事項を事後承認させる政治手法なのですから、彼らにとって都合の良いことです。

 そもそも、代表選挙すら行わない政党が民主主義を語ることこそ、ジョークと言えるのではないでしょうか。民進共産党として、日本共産党を越える “確かな野党” としての存在感を発揮して欲しいところです。