博多駅前での大規模崩落を約1週間で復旧できる土木力を維持し続ける必要がある

 福岡市のJR博多駅前で発生した大規模陥没事故は仮復旧工事がほぼ完了し、高島宗一郎市長が掲げた「1週間で通行を可能にする」という目標も実現間近とNHKが伝えています。

 事故の発生原因を突き止める必要はありますが、死傷者ゼロになる要因となった現場判断や1週間で復旧させた土木業界の能力は今後も維持し続ける必要があると言えるでしょう。

 

 今月8日、福岡市博多区のJR博多駅前の道路が縦横およそ30メートルにわたって大規模に陥没した現場では、12日までに水道やガスなどを仮復旧させる工事が終わり、13日夜も、埋め戻しの作業が行われました。

 14日は、現場周辺で断続的に雨が降り、午前4時ごろから作業が中断しています。午前中からは、地盤工学の専門家などによる会議が開かれ、現場の状況や通行の安全性などについて確認が進められています。

 福岡市は、雨が弱まるのを待って道路の舗装工事に取りかかり、14日夜遅くにも、通行を再開したい考えです。

 

 

 陥没が起きた原因はまだ特定されていません。この部分については事故調査委員会からの調査結果を待つ必要があり、工事ミスと決めつけるのは時期尚早と言えるでしょう。

 ジオ・サーチの冨田洋社長は11月8日に放送された日テレ系ニュースゼロで「10月に調査して空洞はなかった。地下鉄の工事中のミスです」と主張しています。10月の時点で空洞はなくても、現場で工事が行われていた11月の時点で空洞が生じていれば「地下鉄工事によるミス」と決めつけることはできません。

 冨田氏の発言にはポジショントーク的なものも含まれているでしょう。自社の技術力を証明するという点においても、ジオ・サーチ社による検査結果を原因調査を行う上での重要資料として事故調査委員会に提示し、その旨を公表すべきではないでしょうか。

 

 「事故を起こさないための予防策が万全であったか」という点は事故原因を調査する上で明らかになると思われます。

 それとは別に、「“事故の予兆” を察知してからの対応」や「事故後の復旧作業の迅速さ」は評価されるべきものでしょう。これらの部分については対応プロセスが機能したことを評価しなければなりませんし、その能力が損なわれることがないように仕事を続けてもらわなければなりません。

 『公共工事=悪』という図式でメディアは叩きますが、大型の土木作業をできる企業が存続できなければ、いざという時に誰も助けることができないという問題が生じることになるのです。

 “利権” の懸念が払拭できないなら、会計上の監査を厳格にすれば良いことです。そして、請負額の公示だけでなく、工事を行った後の劣化具合も示すなど、“手抜きの温床” が生まれないよう情報を可能なかぎりオープンにすることで抑止策となるでしょう。

 

 高度経済成長の時代に建築された道路やトンネルが物流の大動脈として、現在も支え続けています。これらの改修工事は必要不可欠なのですから、行政が建設業界をどのように舵取りする政策を持っているかが鍵にになることでしょう。

 発注金額で適正範囲内で、求められる水準の工事が行われる仕組み作りに知恵を絞って欲しいと思います。