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電通は「鬼十則」の代わりに、「裏十則」を “新十則” として社員手帳に掲載すべきだ

 社員の過労自殺が大きな問題となっている電通が、自社の代名詞となっている「鬼十則」を社員手帳に掲載することを取り止める方向で検討していると朝日新聞などメディアが報じています。

 一般社員が業務量に圧迫されている現状では、効果的な対策とは言えないでしょう。抜本的な改善策が根付くまでの間は「裏十則」を “電通の新十則” として採用すべきです。

 

 違法な長時間労働を社員にさせていた疑いで厚生労働省の強制捜査を受けた広告大手の電通が、社員手帳に載せている社員の心得「鬼十則」について、12月に社員に配る来年の手帳への掲載取りやめを検討していることがわかった。

 

 電通社員の心得である「鬼十則」は4代目社長を務めた故・吉田秀雄氏が残した教えです。

 これを「素晴らしい教えである」と言うことができるのは一定の権限が与えられた社員だけでしょう。なぜなら、権限がない一般社員では潰れる(もしくはパンクする)ことは時間の問題だからです。

 

 「鬼十則」が誕生したとされる1951年と2000年代では仕事の濃度が全く異なります。1番の違いはIT化によって経営判断のスピードが桁違いに上がったことでしょう。管理職で指示を出すだけの幹部が平社員だった頃とは業務量と要求されるスピードが比べものにならないのです。

 前提条件が大きく変わった状況で仕事をアサインし、「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…」との価値観を押し付ければ、潰される社員が出てきて当然です。

 このような状況下で平然としていられるのは、そもそも仕事がアサインされないコネ入社組か、上司を怒鳴り返せるような気の強すぎる社員に限定されることでしょう。

 少なくとも、仕事ができないコネ入社組の業務分を “真面目で気の弱い(=やさしい)一般入社組” に無理やりアサインされる訳ですから、抜本的な対策は「能力不足の社員を解雇し、有能な人物を新たに雇用して、彼らの仕事が報われる賃金体系を構築する」ことになるはずです。

 

 ただし、現在の法令では社員を金銭解雇することはできません。そのため、社員の入れ替えが起こりづらく、過度な負担が押しかかる社員は今後も出てくることでしょう。

 そうした社員を守るため、電通は「裏十則」を “新十則” として定めることが暫定的な対応として適切と言えるでしょう。「裏十則」とは以下の10ヵ条のことです。

  1. 仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
  2. 仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
  3. 大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
  4. 難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
  5. 取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
  6. 周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
  7. 計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
  8. 自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
  9. 頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
  10. 摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。

 

 「裏十則」の元ネタは吉田望氏によるもの。権限や裁量権が確立されたポジションでなければ、「鬼十則」ではなく「裏十則」に基づき、保身の重要性を自覚する必要があります。

 一般社員はスケープゴートにされたり、理不尽な業務命令をされたりするものです。地位を守るための保身ではなく、命を守るための保身をして批判される筋合いはありません。「いのちだいじに」の命令をすることもマネジメント層の大事な役割と言えるのではないでしょうか。