読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

JR北海道に残された経営再建策は限定的だ

経済

 JR北海道が北海道内の全線のほぼ半分にあたる10路線13区画を「自力で維持することは困難」と明言し、廃止や地元に経費分担を求める姿勢を打ち出したことに批判的な論調をメディアは打ち出しています。

 朝日新聞は11月24日付の社説で「衆知集め危機打開を」と訴えていますが、メディアのスタンスは “大きな自治体” に資金を出させ、問題解決を先送りにしようとする内容になってしまっています。

 

 JR北海道の経営難に対し、北海道新聞は「国が資金を出せ」と訴え、朝日新聞は「道が中心となり、JRと協議せよ」と述べています。どちらの解決策も非現実的でしょう。

 なぜなら、赤字体質が染み付いた企業に国や自治体からの公的資金を入れて延命を図ることはコストに対する意識を軽薄にすることになるからです。

 

 現状、JR北海道は鉄道部門の全線で赤字(営業係数で100を超え)となっています。この状況を放置することは企業として容認されることはなく、「公共交通機関だから」という理由も理解されることはないでしょう。

 「赤字圧縮のため、安全確保に必要な投資や人員まで削った歴代経営陣の失策の結果だ」と朝日新聞は社説で批判を強めていますが、これは言いがかりです。

 大赤字路線を強制的に継続させられれば、赤字に陥ります。安全確保用の投資や人件費しか削れる部分が存在しないのですから、どれだけ優秀な経営者を招聘したとしても、同じ結末を迎えていたことでしょう。

 

 したがって、JR北海道がこれから採るべき経営再建策は明確です。それは「黒字のドル箱路線に資本を集中し、そこからカバーできる範囲の路線のみに注力する」という当たり前のものです。

 もちろん、このスタンスに反対する沿線自治体も出てくることでしょう。その場合はJALが辿った運命をJR北海道も歩むことになるはずです。

  1. JR北海道が会社更生法の適用を申請し、経営破綻
  2. 国の管理下で、赤字原因の洗い出し
  3. 「輸送密度が3000未満」かつ「営業係数200以上」の条件に該当する路線からの撤退が決定
  4. 組合活動に熱心な年配社員の一斉解雇

 上述のことが経営破綻後に起きると考えられることです。現時点であれば、JR北海道と交渉する余地は残されています。しかし、それでも厳しい交渉になることは覚悟しておく必要があるでしょう。

 

 なぜなら、北海道の人口状況を無視した経営破綻策では改善の糸口になることはないからです。北海道総合政策部地域主権・行政局市町村課が調べた平成28年(2016年)1月1日時点での北海道の人口は5376211人。

 この半数以上にあたる人口は下図の赤とピンク(濃ピンク色を含む)市町村に住んでいるのです。

画像:北海道の人口2分図

 外国人の数を含めた北海道の人口の半分は270万人。しかし、赤とピンク(濃ピンク色を含む)で色付けされた市町村に住んでいる日本人の人口だけで272万人を超えているのです。

表1:北海道の市町村別人口(2016年1月1日)
市町村名日本人の人口
(7) 小樽市 122,438
(1) 札幌市 1,931,518
(14) 北広島市 59,194
(13) 恵庭市 68,834
(10) 千歳市 95,442
(9) 江別市 119,092
(5) 苫小牧市 173,317
(40) 白老町 17,879
(16) 登別市 49,983
(11) 室蘭市 88,302
合計値 2,725,999

 そのため、JR北海道がどの路線に対して重点的に資本を投下する必要があるのかは明らかになっていると言えるでしょう。

 

小樽〜(函館本線)〜札幌〜(千歳線)〜苫小牧〜(室蘭線)〜室蘭

 JR北海道が鉄道事業の “大動脈” として位置付けるのは「小樽ー札幌ー苫小牧・室蘭」のルートであることは北海道の人口構成からも明らかです。このルートと札幌に乗り入れている輸送密度の高い札幌圏の路線に資本を集中させて黒字化し、その資金で周辺路線を維持するという方針を推し進める必要があります。

表2:JR北海道の線区別収支状況
(単位:輸送密度=人/キロ/日、営業損益=百万円)
線名・区間輸送
密度
営業
損益
営業
係数
小樽〜札幌
(函館本線、33.8km)
44,981 △2,175 105
札幌〜岩見沢
(函館本線、40.6km)
43,994
白石〜苫小牧
(千歳/室蘭本線、68.0km)
44,812
桑園~医療大学
(札沼線、28.9km)
17,359
室蘭〜苫小牧
(室蘭本線、65.0km)
7,270 △1,882 156
岩見沢〜旭川
(函館本線、96.2km)
9,538 △2,865 147
長万部〜東室蘭
(室蘭本線、77.2km)
5,106 △444 115
南千歳~帯広
(石勝/根室本線、176.2km)
4,213 △1,686 127

 鉄道事業が黒字化する目安は「輸送密度が4000を超えていることと、営業係数が100を切っていること」が不可欠です。営業係数とは100円の営業収入を得るためにどれだけの営業支出が必要であるかを示した指数です。

 首都圏や関西圏の私鉄では営業係数が200前後の路線(=100円を稼ぐために200円が必要な路線)もありますが、それは “ドル箱路線” の営業係数が100を大きく下回った分でカバーされているから存続できているのです。しかし、JR北海道には11月に発表された平成27年度の路線別収支状況(PDF)からもそうした路線はありません。

 少なくとも、黒字を確保できる “ドル箱路線” を作り、駅ビル事業などテナント収入なども含めて、収益を高める経営改革を即時にスタートできなければ、再建の見通しがいつまで経っても見えてこないということになります。

 

 逆に、輸送密度が2000を切り、営業係数が200を超える路線は「JR北海道の経営再建を二重の意味で足を引っ張っている」と言えるでしょう。

表3:JR北海道のお荷物路線
(単位:輸送密度=人/キロ/日、営業損益=百万円)
線名・区間輸送
密度
営業
損益
営業
係数
留萌~増毛
(留萌線、16.7km)
67 △177 2,538
医療大学~新十津川
(札沼線、47.6km)
79 △351 2,213
新夕張~夕張
(石勝線、16.1km)
118 △150 1,188
富良野〜新得
(根室線、81.7km)
152 △979 1,854
深川~留萌
(留萌線、50.1km)
183 △683 1,342
苫小牧~様似
(日高線、146.5km)
185 △1,667 2,125
名寄〜稚内
(宗谷線、183.2km)
403 △2,541 618
釧路〜根室
(根室線、135.4km)
449 △1,076 517
滝川〜富良野
(根室線、54.6km)
488 △1,183 1,010
線名・区間輸送
密度
営業
損益
営業
係数
沼ノ端~岩見沢
(室蘭本線、67.0km)
500 △1,117 965
東釧路~網走
(釧網線、166.2km)
513 △1,617 561
長万部〜小樽
(函館本線、140.2km)
690 △2,168 573
富良野〜旭川
(富良野線、54.8km)
1,477 △956 363
新旭川〜上川
(石北線、44.9km)
1,481 △733 296
上川〜網走
(石北線、189.1km)
1,061 △2,835 332
旭川〜名寄
(宗谷線、76.2km)
1,571 △2,109 384

 ピンクで色付けされた路線は廃止が決定、黄色で色付けされた路線はバス輸送への切り替えで交渉が行われている状況です。それ以外の路線も営業係数が悪く、大きな赤字(営業損益)を計上しています。

 そのため、JR北海道が単独で持つには割に合わないことは明確であり、沿線自治体などからの協力が皆無であれば、路線廃止を本格化させることになるでしょう。

 

 北海道新幹線のルートから外れる「長万部〜室蘭〜苫小牧〜札幌」と「札幌圏の在来線」をJR北海道にとっての “ドル箱路線” にすることが唯一の活路であり、それ以外はオマケにすぎない状況です。

 公共交通機関だから維持すべきと主張するなら、営業損失分の補填は沿線自治体が行わなければなりません。JR北海道だけに負担を要求することは明らかに無責任だと言えるのではないでしょうか。