日本の大手電力各社はドイツを見習い、原発停止による損害賠償訴訟を起こすべきだ

 ドイツ政府が国内に存在する原子力発電所を段階的に廃止することを決定したことで電力会社が政府に賠償を求めていた裁判で賠償を命じる判決が下ったとNHKが伝えています。

 日本には「ドイツの姿勢を見習え」という声が左派・リベラルを中心に多いのですが、大手電力各社もその声に従って行動を起こすべきでしょう。なぜなら、民間企業の財産権を政府や役所が平然と侵害していることが起きているからです。

 

 ドイツ政府は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、国内にあるすべての原子力発電所を2022年までに段階的に廃止することを決めています。

 これに対して、ドイツ国内で原発を保有しているドイツやスウェーデンの大手電力会社合わせて3社は、政府の急な方針転換によって多大な損害を受けたとして政府に対し、賠償を求める裁判を連邦憲法裁判所に起こしていました。

 裁判所は6日、ドイツ政府が段階的に原発の廃止を決めたこと自体は合憲だとしたものの、企業側が原子力発電所に続けてきた投資などに対して政府は適切に賠償しなければならないという判断を示し、賠償を命じました。

 

 

 政府がどのような政策を打ち出すかは自由です。ただ、政権が原発の廃止を決めることは「市場の根本的なルール変更を強いること」を意味するため、損害賠償が認められたということになりました。

 一方的な都合で契約破棄をしたことと同じですから、賠償が認められて当然と言えるでしょう。

 日本の電力会社も政府に対して、原子力発電所の運転停止を要請されたことに対する損害賠償訴訟を提起すべきです。法律に基づかない理由で運転が停止し、安全対策についてもルールの遡り適用がされているのです。

 その “しわ寄せ” はすべての電力消費者に負担させられている訳です。

 

 電力各社は「政府の決めたエネルギー方針や市場のルールの中で安価で安定した電力供給に勤しんでいる」とアピールする意味でも、電力政策の責任者は政府と経産省だと明確にする必要があります。

 『行政指導』によって、原子力発電所の運転が止められ、火力発電用の燃料費の購買で足元を見られる結果になっているのです。少なくとも、行政に対して賠償を求めるべきです。

 そうすることで、無責任な思いつきで原発の運転停止を “お願い” するような政治家を駆逐することができるでしょう。なぜなら、「法的根拠」や「運転停止による損害賠償」といった中身のない政策変更を抑止する相応の効果をもたらすことが期待できるからです。

 

 もし、日本で原子力発電所を段階的に廃止するなら、きちんとした手順を踏むことが不可欠です。

  1. 政府が原子力発電所の段階的廃止計画を発表
  2. 代替エネルギー源の構成案を提示
  3. 原発廃止による建設・運営費の損害に対する補填・賠償額を算出
  4. 選挙という形で国民に信を問う

 “脱原発” を主張するなら、具体的なロードマップを提示しなければなりません。「20XX年までに原発の運転を段階的に廃止する」のであれば、代替エネルギー源をどう確保するかを示すことは必須です。

 また、「再生可能エネルギーで代用する」と主張しても、予定通りに開発が進まなかった場合のプランBが存在するのかも明記しておかなければなりません。

 その上で、発言できる能力を持った電力会社の資産である原子力発電所の資産価値をゼロにする訳ですから、資産価値を落とす行為をしたことに対する賠償をしなければならないことは当然です。賠償に必要な額を算出した上で、脱原発を推進すべきという声が国民の多数派であれば、原発の運転を止める根拠となるでしょう。

 

 立憲主義を訴える左派やリベラルが電力問題については沈黙を保っていることはなぜでしょうか。“法律を守っていない政府” を批判できる格好のテーマであるにもかかわらず、攻め立てないことが不思議でなりません。

 原発問題において「法的根拠に基づかず原発の再稼動が妨げられている」と主張できないのであれば、立憲主義などと主張することは完全な御門違いであることを自覚する必要があるのではないでしょうか。