東京都や政府に1兆円の資金援助を求める五輪組織委員会がレガシー施設への投資を求めるのは強欲すぎる

 東京でのオリンピック、パラリンピックの開催費用が最大で1兆8000億円になることが試算で明らかとなり、組織委員会このうち1兆円近くの負担を東京都や政府に求めているとNHKが伝えています。

 東京都の小池知事と競技会場見直し協議の結果、500億円規模の予算が削減されましたが、約1兆円となる資金援助を組織委員会側が求めているのであれば、「アスリート・ファースト」という主張は単なる “言い訳” と見なされることになるでしょう。

 

 4年後の東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は、最大でおよそ1兆8000億円に上ると試算した大会の開催費用のうち1兆円近くの負担を東京都や政府などに求める案をまとめたことがわかりました。都などが負担をどこまで受け入れるのか、今後の協議の行方が焦点となります。

 

 「新たに負担を求めている分はいずれも組織委員会が負担する経費である」とNHKは伝えています。

 招致段階で「自らが負担する」と宣言しておきながら、自らの財源では賄えないから支援して欲しいと訴えているのです。しかも、自分たちの見通しの甘さを棚にあげ、「競技施設というレガシーを作ることは必須だ」と要求しているのですから、強欲という以外に言葉が見当たりません。

 ちなみに、組織委員会が負担を求めている項目は次のとおりです。

 

  • 総額:7700〜9900億円(全体の42〜55%)
    • 大会運営費:4100億円(運営費の50%)
    • 仮設施設の整備費:2400億円(整備費の70%あまり)
    • 予備費:1100〜3400億円

 「自らで負担する」として誘致したものの、実際には当初の見積もり額の倍は必要になることが明らかになったのです。あまりに杜撰な計画であったことが浮き彫りになったと言えるでしょう。

 アメリカやヨーロッパで住民投票によりオリンピック誘致が断念に追い込まれるのは自治体が開催費用の補填を余儀なくされることを住民が自覚しているからです。「1兆円規模の予算をオリンピック用の都市開発に使うより、別の分野に使うべき」と考える人が多いからでしょう。

 組織委員会からの資金援助要請で賛同しやすい項目は『予備費』です。

 完璧なプランは存在しないため、多少の予算がオーバーすることは起こり得ることです。そのため、「全体予算額の 10〜20% を『予備費』として、もしもの場合は使えるようにして欲しい」という要請については理解を得やすいものだと思われます。

 

 組織委員会は「財源が足りないから負担を東京都などに求めるものではない」とコメントを発表していますが、これは逆効果になるでしょう。

 「財源があるなら、援助を求めるな」と切り返される根拠になってしまいます。また、「レガシーとなる競技施設も財源があり、“アスリート・ファースト” 訴える組織委員会が建設・運営すれば良いではないか」となるからです。

 東京都ではなく、政府に負担を依頼するという選択肢もありますが、これも良いやり方とは言えないでしょう。

 なぜなら、「予算編成に失敗したプロジェクトを政府予算で穴埋めする」という “悪しき前例” となるからです。東京五輪で財政的に大失敗した組織委員会が次なるプロジェクトでも、同様の失敗を繰り返し、国からの支援に頼ることが目に見えているからです。

 

 北海道の札幌市が『2026年冬季オリンピック・パラリンピック』を誘致すると宣言し、活動を始めています。いい加減な予算編成が2020年の東京五輪で認められることは、コストパフォーマンスが悪い冬季大会にとって大きなポジティブ要素となるでしょう。

 「2026年札幌オリンピックに合わせて、北海道新幹線を札幌まで開通させよう」という類の運動が活発化することは明らかです。そして、その予算は政府が支出する羽目になるはずです。

 雑な見積もりで算出された予算を承認する必要はありません。仮に、承認しなければならないのであれば、「誰がその予算案を認めたのか」ということを明らかにし、責任者に対する処分は不可欠なことです。

 当事者意識が皆無な人々が無責任に作成した予算によって、無駄な支出を強いられるほど馬鹿げたことはないでしょう。少なくとも、東京オリンピックの組織委員会はコスト感覚が乏しく、ゴネる無責任な組織だと言えそうです。